コメントの対象となった記事は多分この2つ。
今日の朝日新聞朝刊の中村桂子さんの「私の視点」について
http://buu.blog.jp/archives/50339835.html
補足しておきます
http://buu.blog.jp/archives/50340852.html
コメントは後者に記入されました。以下、コメントを引用して返答しておきます。
2013年8月に中村佳子さんが「科学者であること」という本を出されたからです。
すいません、まだ読んでません。
iPS細胞で興味を持った分野だけれども、どうも不安だから、この分野はやめたほうがよいだろうか。と理系を諦める高校生も出てくるように感じて、切ないです。そのくらいで諦めるならやめなさいというのは簡単です。でも、それで日本の未来はどうなるのでしょう。
正直、日本の未来については、別にどうということもないと思います。つい最近、「科学の価値は?」という記事を書きましたが、
ブログでバイオ 第82回 「科学の価値は?」
http://buu.blog.jp/archives/51415573.html
今の科学研究費は、ストレートに言えば研究者の生活保護くらいの価値しかないと思っています。そこに投じられる税金は、「研究成果」という意味であれば十分な費用対効果を挙げていませんし、またこれからも継続的に挙げていけるとは思えません。10年に一度くらい、びっくりするような成果は出るかも知れませんが、そういうインパクトのある成果を出したいなら、高校生たちは他の分野で頑張った方が良いと思います。
とはいえ、大学や大学院ぐらいまでは、好きなことを勉強、研究できるのが学生の権利ですから、やりたければやれば良いと思います。僕自身も楽しかったから生化学の研究をしていたわけですし、そのことを後悔したことはありません。大学の専門と、その後の人生には、それほど大きな関連はないのではないでしょうか。
「日本の未来」ということであれば、科学を巡る状況よりも、男女差別が改善されないこと、硬直した労働市場、世代間格差といった諸問題のほうがずっと深刻だと思います。
優秀な方は、海外に出たほうがいいんじゃないの?とでも言いたげな新書
実際、その通りだと思います。ありもしない希望を見せるのは詐欺ですし、高校生のためにもなりません。それに、海外に出ることは全く恥ずかしいことではないですし、立派なキャリアパスのひとつです。まともな研究者であれば、ほぼ例外なく、海外での研究経験があると思います。優秀なら海外へ、という主張を中村さんがしているのであれば、完全に同意します。それは、プロ野球やプロサッカーと同じです。いつまでも国という枠組みに固執するのはいかがなものかと思います。
2013年の今も、やはり体質に変化はないのでしょうか?
ないと思いますし、これからも変わることはないと思います。
タンパク質のプロジェクトはなんとか役に立ったのでしょうか?
たくさんの研究者の雇用をその時点だけとはいえ生み出したのですから、それなりの効果はあったと考えるべきでしょう。日本の研究費は、研究成果をあげるためではなく、研究者の雇用、あるいは研究者の生活費を供給するためのツールだと思います。
癌の研究は日本では、厚生労働省の予算で進められているように思うのですが、それと文部科学省や通産省の予算と関係はどのようになっているのでしょうか?
縦割りの中でそれぞれがやっていると思います。大規模予算の場合、それぞれの研究トップがどこの役所と仲が良いかが重要です。そのあたりの縦割りの弊害をなくすべく、日本版NIHを作ろうという動きもあるみたいですが、個人的には全く期待していません。
医学部に進んでもやはり、このような悩みはつきないものなのでしょうか?
一緒です。ただ、医者はそこそこの給与でバイトできるので、生活に困ることなく研究を続けることが可能という、小さくないメリットがあります。