2013年11月17日

割引制度徹底攻略ガイド その1 ユニクロの割引

ときどき「元木の専門は何なんだ」と言われるのだが、要は分析屋で、その対象が色々なので、本当の専門は何なんだと聞かれてしまう。その分析対象の一つが「割引制度」で、ある道路関連の公団が政治家の圧力を受けて割引制度を導入せざるを得なくなった時、その制度設計をやったのが私である。その「パスポート」という割引制度は公団始まって以来のヒット商品となり、担当者には金一封が出るという異例の事態となった。私はその後二年間にわたって、その公団の割引制度の設計に携わった。この当時(1998年)から今に至るまで、多分日本で唯一の割引制度の専門家である。

さて、その割引制度だが、これまでは投入する側の立場に立って、各種のB to B、B to Cの事業主に対してコンサルティングを実施してきた。今回は、ブログを通じて、巷にある割引制度の使い方について事業主のみならず利用者の視点からも情報発信していくことにした。こういう分析を公表してしまうと、これまで何の気なしに割引に誘導されていた顧客が「賢いお客」になってしまい、割引の効果が薄れ、割引制度自体の見直しにつながったりする危険性があるのだが、こんな辺境のブログであればそのインパクトはそれほど大きなものになならないだろう。このブログの読者だけの耳寄り情報ということである。

さて、第一回は、ユニクロである。

ユニクロの割引の基本は「潜在需要現地顕在化型」と分類される。このタイプの割引はスーパーや大手家電量販店などの折込広告で頻繁に実施されているもので、割引されている目玉商品を誘引素材として来店を誘発し、その顧客に割引製品とは別の商品を追加で購入させることを狙ったものである。

ユニクロはほぼ毎週、ネットと店頭でチラシを配布しており、そこには「特別限定価格」や「1日限り」、「◯月◯日まで」といった文字が並んでいる。「お、これ、買おうと思っていたんだ」と想った顧客は店頭に赴き、その商品を手に取ると同時に店頭に並んでいるその他の商品も手に取り、気に入れば買い物かごにいれるのである。

さて、この種類の割引制度の攻略法は非常に簡単で、「割り引いていないものは買わない」ということである。その隣で定価販売されている商品は、来週には「4日間限定」などと称して割引になるかも知れないのだ。近所にユニクロがあって、頻繁に買い物に行ける人なら、割引されていない商品は購入すべきではない。
なお、ユニクロではこういった割引の他にいくつかの別のタイプの割引がある。代表例は「在庫処分型」と「イベント型」である。

「在庫処分型」は売れ残りをたたき売りすることである。衣料品の場合、季節ものの商品が多いので、秋口になってもドライタイプが売れ残っていたり、あるいは春になってもヒートテックが売れ残っていると邪魔で仕方がない。どうせ来年になれば新しい商品が投入されるので、さっさと売りさばいてしまった方が、保管料や廃棄料よりも安くつく。このままではお金を支払うべきところ、お金をいただけるのだからユニクロとしてもこんなにありがたいことはない。こういった在庫処分型の割引商品はお買い得が多いので、保管しておくスペースがあるのなら、通路に置かれている金属ラックに並んでいる在庫処分商品をチェックしておいて損はない。

イベント型とは「創業祭」のような文字通りイベントでの大安売りである。このケースは賑やかし、知名度アップ、好感度アップなどイメージ戦略が中心になっていることが多く、「創業祭に行くと得みたいだ」という雰囲気を創りだす。あわせて在庫処分なども行われるし、「先着◯名様限り」のような潜在需要現地顕在化型割引を連動させることも普通である。さらに、創業祭の期間だけ利用できる割引クーポンを配布したりもしていて、イメージの向上に向けた努力に余念がない。この創業祭であっても、もちろん割引商品以外は買うべきではない。

では、ユニクロで、定価で買っても良い物には何があるのか。最近私がユニクロにおいて定価で買ったものには、錦織圭モデルのジャージがある。大型店とネットでの限定販売商品で、すでに完売である。この手の商品は大型店には並ぶので、主要大型店の店頭で売れ行きをチェックし、サイズに欠品があるものなど、いかにも売れていそうな商品は割引の対象になる可能性が低い。こういった商品は、割引されていなくても、気に入ったのなら買っておいて損はないだろう。

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