神田秋葉原御徒町には名店が多いが、勝漫もその一つ。創業昭和52年(1977年)はこの辺りのとんかつ屋としては新しい。1990年代前半には「日本一」と賞賛する人もいるほどの有名店になった。
2007年に厨房を仕切っていた松井孝仁氏が独立し、以後、何度も職人が変わり、その間、かなり味を落としていた時期もあったのだが、2013年11月の時点ではかなり頑張っている印象。しかし、絶好調時の輝きを取り戻すまでには至っていない感がある。
店は以前よりも1.5倍程度広くなった。壁には各種メニューの張り紙があって、あたかも神田の安い居酒屋のようである。もはや、老舗の風情はなくなってしまった。接客も、ファストフードの「ポテトはいかがですか」のように皿に盛った椎茸を勧めにくるあたり、ちょっと高級感に欠ける。しかし、頻繁にお茶の減り具合をチェックしたり、熱心にお客への接待に努めている様子には、悪い気はしない。
ヒレカツはやや高温でしっかり揚げられており、ロースはそれに比較するとややマイルドな感じ。ヒレ肉はジューシーさを閉じ込めていて、肉汁の旨味が楽しめる。ただ、肉自体の旨味はもう一息。衣はやや粗めで、サクサク感が良い。これにソースをかけてしまうのは野暮というもの。素のままか、少量の塩、辛子で楽しみたい。だからこそ、一層肉そのものの旨味が足りない点が惜しまれる。食べ進むうちに衣が湿ってきて、肉から剥がれ気味になってしまったのもちょっと惜しい。
ご飯はやや柔らかめで、個人的には好みだが、もっと硬めの方が一般受けはするかもしれない。味噌汁は標準的。漬物は山葵やゴーヤがあってちょっと面白かった。
揚げ方がコロコロ変わってしまうようだと今後の味はどうなるかわからないのだが、少なくとも今のところはかなり良い味だと思う。