ジブリ最新作の「かぐや姫の物語」を観てきた。
予告編では「かぐや姫の罪と罰」という思わせぶりなコピーを使っていたのに、実際はそのあたりは思ったよりも明確ではなく、わかりにくい。ちょこっと出てきたセリフから推測すると、「地球みたいな下賎な世界に思いを馳せやがって」というのが罪で、地球での生活との別れが罰なんだろうな。
ストーリーのおおまかなところは古くから伝えられている竹取物語とあまり変わりがない。篤姫で松坂慶子がやっていたような教育係と、幼なじみが追加してある。これによってストーリーに厚みがでていて、おかげでジブリとしてはかなり長い、2時間以上の映画になっている。
まんが日本昔ばなしのジブリ版という感じだが、日本の四季と自然を強く意識した絵作りや演出はさすがだし、音楽は魅力的だし、声優を使わずに普通の俳優を起用するあたりも違和感はない(アフレコではなくプレスコだからというのが大きいと思う)。作品の全てから、きちんとジブリらしさが出ている。加えて、原作に忠実なので、最近のジブリ作品に多く見受けられる説教臭さがない。
輪郭線に囲まれた領域をベタ塗りするというアニメ画手法から大胆に抜けだした画法はいわばパラパラマンガへの先祖帰りでもあり、絵コンテに彩色したようにもみえるのだが、微妙にビブラートするような線が躍動感を生み出していた。ちなみに陰影の付け方などを見ていると普通のアニメと同じように彩色されているので、コンテか墨で描いたように見える輪郭線の処理には逆に手間がかかっているのだろう。
他にも、特定のキャラによってユーモアを演出したりしていて、トータルでみて完成度が高い。なるほど、公開時期を後ろ倒しして熟成度をアップさせた甲斐があったというものである。日本人でなくては作ることのできない、だからといって、日本人なら誰でも作れるわけでもない、むしろ、ジブリ以外では作ることが難しい作品だと思う。つまり、ジブリならではの映画で、さすがというよりない。
余談だが、ラストの終わり方をみて、日本人って、こういうところが淡白だよなぁ、としみじみ感じた。良い、悪いではなく。
評価は☆3つ。