とんかつを評価する上で最初に食べておきたい一軒である。店主の竹内さんは水道橋の名店「かつ吉」で修行し、後に独立してこの店を構えた。
主力メニューは特ヒレ、特ロース、ヒレ定食、ロース定食というラインナップ。なぜか「特」メニューには定食がなく、セットを追加注文するスタイルになっている。ここで頼むべきはもちろん「特」付きである。とんかつ屋でおいしいとんかつを食べようと思ったら、一番高いものをい注文しなくては駄目だ。これが鰻屋と違うところである。今回食べたのは特ヒレである。
カツは比較的低温で揚げている店だが、それは分厚い豚肉にきちんと熱を通すのが目的である。これを高温の油で揚げてしまうと、表面だけに火が通ってしまいよろしくない。したがって、一層分厚い「特」付きメニューはレギュラーに比較しても念入りにじっくり揚げている様子である。
平田牧場の三元豚を使った肉は、質が良くジューシーで、かつ腕の良い職人が、肉が本来持っている旨味を上手に引き出している。肉には下味がしっかりつけてあって、ソースはもちろん、塩さえも不要である。ただ柔らかいのではなく、しっかりとした歯ごたえがあり、しかし固かったり、歯切れが悪かったりはしない。この食感は素晴らしいの一言である。そして、噛むことによって染み出てくる肉汁の美味しいこと。
安いとんかつ屋はもちろん、2000円以上のお金を取る高級とんかつ屋であっても肉の味が全く感じられないカツを食べさせる店があるけれど、そういった店が営業を続けられるのは、食べる側が味のない肉に何の疑問も持たないからである。客の側からもとんかつに対する要求水準をアップさせるべきで、そのためにはこの店のカツを食べてみて欲しい。良いとんかつを食べるという経験を積むには、うってつけの店である。
カツはかなり大ぶりに切られているが、下処理が念入りにされているようで、一切れが大きくても噛みきれないということはない。
衣はやや細かめでしっかりしたタイプだが、肉との一体感がある。ただ、食べ進むに連れて浸み出した肉汁や油で衣がべちゃべちゃになるのはちょっと惜しい。
付け合わせにはキャベツだけではなくレタスやトマトが添えられていて、なかなか豪勢である。ただ、個人的にはキャベツだけでも満足。
ご飯と味噌汁は美味しい。ご飯が美味しかったのは開店直後だったからかも知れない。味噌汁は非常によくだしが取れていて、味の濃いおかずに良く合う。
なお、漬物だけは標準的である。
店名 丸五 (まるご)
TEL 03-3255-6595
住所 東京都千代田区外神田1-8-14
営業時間 11:30〜15:00 17:00〜20:20
定休日 月曜日及び第3火曜日