カーリング日本女子チームはノルウェーを破って、ソチ五輪の切符を手に入れた。NHKは律儀にその試合をテレビ放映してくれたけれど、日本のカーリング熱は今一歩盛り上がらない。もちろん、ソチ五輪の間はそれなりに注目を浴びるだろう。しかし、次に注目されるのは、多分4年後のオリンピック直前になるはずだ。
僕はテレビ放映を観ながら、カーリングがメジャーなスポーツにならない理由をつらつらと考えてみた。
もちろん、大きな原因は、やる機会がないからだ。カーリング場に行きさえすれば、ほとんど誰でも安価にカーリングを楽しむことができるのだが、そもそもそのカーリング場が近所にない人ばかりだ。カーリング場の設置には地盤がしっかりしている必要があるし、ある程度寒い地域じゃないと施設内の温度を低く保つことも難しい。それに、誰が作るんだ、どうやって経営を成り立たせるんだ、という問題もある。首都圏ではスケート場をカーリング場として利用することも行われているけれど、早朝限定だったりするし、専用リンクではないので、凸凹があったりして、カーリングのデリケートな楽しみは全く味わうことができない。
カーリング場の有無に加えて問題なのは、競技の難しさだと思う。それは、プレイすることの難しさではなく、理解することの難しさだ。カーリングは、やるのは簡単だが、やったことがない人が観て楽しむのは難しい。つまり奥が深い。わからないから、面白くないのである。カーリングをやったことのない人のほとんどは、テレビで観ていても競技の面白さの半分も理解していないはずだ。たとえばノルウェー戦で日本が勝てた理由も、その前の中国戦で日本が負けた理由も、良くわからないと思う。しかし、それでも、もうちょっとカーリングの面白さを感じることはできないものだろうか。
僕もまだ、おおまかなことしかわからないのだが、海外の強豪ナショナルチームと勝負したことがあるくらいにはなんちゃってプレイヤーなので、簡単にカーリングのテレビ観戦ポイントを書いてみる。次のようなことをわかっているだけで、多少なりとも、テレビ観戦が面白くなるのではないかと思う。
戦術について
1.カーリングで、何も障害がなければ、好きな場所にぴったりと投げることはそれほど難しくない
2.まっすぐに投げて相手のストーンを弾き出すこともそれほど難しくない
3.大事なのは、はじいた後に2つのストーンがどこに行くかである
4.特に、自分が投げたストーンの行き場所の調節は大事である
5.関係するストーンが増えれば、一層複雑になる
6.投げてみて「しまった」と思い、とっさにプランBに切り替えることは良くある
デリバリー(ストーンを投げること)について
7.初心者は、まず上半身を固定し、下半身だけで投げる
8.上級者は、下半身の調整に加えて、手首でも調整して投げる
9.曲げることはそれほど難しくない
スイープ(掃くこと)について
10.弱めに投げて、スイープで調整する
11.前半に掃くと距離が伸びる、後半に掃くと大きく曲がる
戦略について
12.上位チームは序盤にストーンをためたがり(ドローゲーム)、下位チームはストーンをなくしたがる(テイクアウトゲーム)
13.終盤は、勝っているチームはテイクアウトゲームを、負けているチームはドローゲームを志向する
14.後攻のチームは1点では不満
15.先攻は、後攻に1点だけを取らせるように工夫する
16.終盤は最終エンドがいつなのか、その時後攻はどちらなのかを意識する必要がある
その他
17.結構時間がなくて忙しい
ノルウェーチームは、何よりミスが多かった。でも、試合の主導権を握ったのはノルウェーの方だった。その流れが徐々に変わってきたことはなんとなくわかったかも知れないけれど、決定的になったのはあくまでも第8エンドで日本が6点を取った瞬間である。それまでは、ほとんど互角の勝負だった。おまけに、その直前に日本は酷いミスをしていた。国際試合程度のレベルになると、ちょっとしたミスで勝負の行方があっという間に決まってしまったりするのだが、お世辞にも世界最高レベルとは言えない両チームだったので、どちらが酷いミスをしたかで勝敗が決した。
中国は日本とやってすぐに、日本はノルウェーとやってすぐに、「この相手は自分たちよりもミスをする」ということに気が付いたはずだ。そして、気が付いてからは、どうやって相手にミスをさせるかを考えてプレイしていたと思う。相手がミスをしないなら自分から攻めていく必要があるのだが、ミスをする相手なら、相手のミスを誘うようなプレイをすれば良くなる。相手を見て、プレイの内容を変えていくことが大事なのだ。相手がミスをしやすいと思えば、序盤でなるべくガードのストーンを多く配置して、ゲームを複雑にしていく。一方で、自分たちが格下だと自覚したら、なるべくストーンを減らすようにプレイするほうが安全だ。どんどんストーンをはじき出す作戦に出れば、普通は交互に1点ずつを取り合う展開になる。格上はそれでは面白くないので、なるべくストーンを残すことになる。