信長、秀吉、千利休などの実在の人物たちを登場させたフィクション小説の映画化作品。
実際の利休は70歳で死んでいるが、この映画の中の利休は40〜50歳ぐらいに見える。つまり、あまり史実と重ねて鑑賞しないほうが良いのだと思う。
役者たちはなかなか芸達者で、観ていてがっかりすることがない。海老蔵の演出はちょっと過剰で「これは歌舞伎じゃないのに」と思う場面もあるにはあったが、それも映画の雰囲気を壊してしまうほどではない。むしろ、実際の歌舞伎では高い声が遠くに届かないのが気になる海老蔵だが、映画ではそういった心配がないので、安心してみることができる。声の問題さえクリアされるなら、海老蔵は決して悪い役者ではないと思う。また、大森南朋が久しぶりにちゃんとした役で使われているのも嬉しい限り。
脚本もなかなか。ちょっと技に走りすぎている感はあるものの、嫌味に感じるほどではない。
違和感がある背景が時々使われていたのは気になったけれど、映画を壊してしまうほどではなかった。一方で、一人の役者で数十年の経過を描いているのだが、肌の質感などのメイクや特殊効果が見事で、役者の演技も加わって、違和感のない映像になっていた。ときどき、「何年も経過しているのに顔にも、所作にも、全然変化がないじゃないか!」という作品があるけれど、この映画はそのあたりちゃんとしていた。
ストーリー的には、ええっ?わびの原点ってここだったの?とびっくりさせられるのだが、そのあたりのファンタジーにも目をつぶろう。
最大の問題点は「わび」を描いているため、とても静かで、眠くなること。「切腹まで◯◯年」という字幕がなくなってからはスピードアップして眠気を感じなくなるのだが、そこまでがちょっとつらい。寝不足での鑑賞はおすすめできない。
全く期待せずに観に行ったのだが、意外と面白かった。評価は☆2つ。