2014年01月12日

日本の知らない風力発電の実力

以前、「遺伝子組み換え食品との付き合いかた」を出版してもらったオーム社から出た風力発電に関する本である。

「風力発電って、日本では色々駄目だしされているけれど、実際は結構いけてるよ」という内容。以前、僕も自著「総統閣下はお怒りです」の中で「原子力で発電している分を全部風力発電にすると、海岸線が風車だらけになって大変なことになる」という主旨のことを書いたんだけれど、この本はそういう考え方にも明確に反論している。

要は、「全部」と考えることがナンセンス、ということ。出来る範囲でやれば良い。比率を高めていくことを考えれば良く、いきなり全部代替しようとなど思わなければ良いのである。ただ、重要な事は、そこにファーストプライオリティを置くことである。「まぁいいや」と考えてしまうと、「ぜひとも原子力で」と考えている既得権者たちにつけこまれる。

海外の国々も、海がないとか、山がないとか、島国であるとか、様々な自然環境にあって、でも、それぞれがきちんと風力発電への依存率をアップさせてきている。そうした中、日本は完全に風力発電後進国になっている。なぜかって、それは原発があったからである。

しかし、原爆を二発も落とされ、深刻な原発事故まで起こしている国が、主要国の中で最も原発導入に熱心というのもいかがなものかと思う。日本人は、もう少し風力発電の実力を知っておくべきだろう。海外の動向を知り、風力発電のメリット、デメリットを知った上で、それでもなお原子力で、というのなら、それも一つの見識ではある。しかし、多くの人は、この本を読むだけで、「あれ?日本の発電のあり方は、ちょっと遅れているんじゃないの?」と思うに違いない。

風力発電が万能というわけではないし、何から何まで風力発電で、というのはナンセンスである。しかし、もっと大幅に導入されてもおかしくないし、たくさんの風力発電所が設置されることによって発生するメリットも少なくない。大事なのはバランスだ。

原発容認派の人たちも、その多くは「とはいえ、できれば原発はない方が良い。徐々に減らしていくことができるなら、それに越したことはない」と思っているに違いない。ただ、じゃぁどうしたら良いのか、という具体的な案を持っておらず、強硬に原発を推進しようとしている人たちに対しては反論する術を持たないケースがほとんどだと思う。そういう人たちは、まずこの本を読んで、知識を持っておくと良いと思う。

例えば、「風力発電なんて、風が吹かなければ役に立たないじゃん」と言われた時、どう反論するのか。答えは簡単。「全国的に無風なんてありえない。風が吹いている場所で発電すれば良い」である。これは、「一つの風力発電所で常時安定して発電し続ける必要性は、必ずしもない。多くの風力発電機が存在すれば、発電量の凸凹は平準化される」ということである。こういった、言われてみればなるほど、という話がたくさん書かれている。風力発電の今を知っておくことは、多くの日本人、選挙権を持っていて、今後の電力行政の方向について意思表示しなくてはならない人たちにとって必要なことのはず。現代の日本人の基礎知識として、まずはこの本を一読しておくべきだろう。

#本書はオーム社より献本されたものです。

  

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