2014年03月15日

ネイチャーに掲載されて有名人になるためのガイドライン

1.テーマを選ぼう
世の中をびっくりさせる内容であることが必要です。そんな内容ではなくてもネイチャーには載りますが、しょぼいネタでは世の中に知られることなく終了してしまいます。どうせならドカーンと世の中をびっくりさせましょう。でも、意外と、そんなテーマは見つからないものです。ネイチャーに載って有名人になるためには、このテーマ設定が最大のポイントと言っても過言ではありません。テーマ設定に際しては、STAP細胞の論文を読んだ人たちの反応を参考にするのもいいかも知れません。これを読めば、何が求められているか、その一端がわかります。

「今回の発見は小保方さんが研究者として、業界の固定観念に縛られ過ぎずにいたからこそ達成できた」(鈴木勇貴さん)
「重要なことは、小保方さんが空気を読まなかったことである」(堀川大樹さん)

2.学位を取ろう
論文を書くには、博士であることが望ましいです。博士なら、何でも構いません。今は博士はどこも定員確保に汲々としていますから、修士号さえ持っていて、テーマを選ばなければ、誰でも博士課程に進むことができます。これは、お金さえあれば誰でも都知事選に出馬できるのと一緒です。ただし、誰でも博士になれるわけではなく、これも都知事選と一緒です。でも、大丈夫。博士になるのは、都知事になるのよりもずっと簡単です。狙い目は、早稲田大学の先進理工学研究科生命医科学専攻あたりです。ここはコピペの博士論文でも学位がとれてしまうことで有名です。最短でも3年はかかるでしょうが、そのくらいの時間的投資は必要です。

3.研究所に所属しよう
研究をするには、場所もお金も必要です。無から有を創りだすのが主眼としても、それと知られては意味がありません。だから、どこかの研究所に籍を置く必要があります。ここでおすすめは理化学研究所です。この組織は文科省所轄の予算消化組織ですが、消化している研究費がかなり膨大なため、いつも費用対効果について批判されています。それをかわす意味で毎年文科省から天下りを引き受けたりと努力していますが、彼らの念願は「自前でノーベル賞研究者を輩出すること」です。残念ながらまだその野望は叶っていませんので、あの手この手で「すでにノーベル賞をとった研究者」を連れてきています。しかし、研究施設としての格は相変わらず東大よりも下で、研究者、事務方はいつもコンプレックスを抱えています。その鼻っ面に、ノーベル賞級の研究テーマをぶら下げれば、パクっと食いついてくれるかも知れません。潜り込むことに成功してしまえばこっちのものです。

4.論文を書こう
ネイチャーに投稿する場合は、それまで利用していた文章のコピペはダメです。これだけは自分で書くか、友達に書いてもらいましょう。でも、写真の盗用は大丈夫です。都合の良い写真をネットで検索してきて、1で決めた結論を上手に並べて、もっともらしく作文します。この、スタートとゴールをあらかじめ決めておいて、あいだのロジックを組み立てるのも、熟練が必要です。でも、これをやっている人たちは世の中にたくさんいますから大丈夫です。○○総研という名前の会社の研究員の人たちは、役所が持っている生データを使って、役所にとって都合が良い結論を導き出すプロですが、彼らは入社してすぐにこのスキルを身につけます。1ほどの難易度はありません。

5.諦めてはいけない
テーマのインパクトが大きければ大きいほど、周囲からは「信じられない」と言われるでしょうし、論文を投稿しても「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄している」と酷評されてリジェクトされるかも知れません。しかし、そこまで言われるのは1のテーマの設定が素晴らしいことの裏返しでもあります。諦めずに、都合の良いデータ(写真)を集めてきては切り貼りし、説得力をもたせます。諦めたらそこでゲームセットです。逆に、諦めなければ、敵は「死」だけです。頑張って長生きしましょう。あ、あと、フォトショップの技術は身につけておいたほうが良いでしょう。でも、多分、ネイチャーに投稿する頃には、嫌でも身についているはずです。

6.キャラ作りを忘れずに
ネイチャーに掲載されても、そこでオシマイではなく、このあとも重要なポイントがあります。それは「キャラづくり」です。例えば、耳が聴こえない作曲家とか、実験室をピンクや黄色に塗り替え、割烹着を着て実験する研究者とかです。日本人は彼らが作った音楽や研究成果などよりも、こうした「キャラ」や、キャラの背後にある物語が大好きなので、本質よりもむしろこちらに注力することが有名人への裏道マップとなります。もちろん、こういうのはフィクションで構いません。耳が聴こえても聴こえないふりをすれば良いし、料理なんかしたことがなくても、割烹着を着てしまえば良いのです。何よりも意外性と感動が大事です。ちなみにこの手の準備は付け焼き刃で構いません。理研の例で言えば、実験室を塗り替えたのは会見の一ヶ月前だったようです(出展:中日新聞「STAP疑惑底なし メディア戦略あだに」http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140315070914336)。

注意.インパクトは重要だが、無理筋はダメ
「永久機関を発明しました」とかはダメです。

付録Q&A1.もしバレたらどうしよう?
嘘がバレたら諦めて謝りましょう。今の世の中は、嘘がバレずにすむようなことはありません。話が大きくなればなるほど、みんなが検証して、嘘だとバレます。「もしバレたら」じゃなくて、正確には「バレます」。これは必然なので、ちゃんとバレたあとのことについても準備しておきましょう。ただ、残念ながら、ここから先のガイドラインはまだありません。現実がまだこの手前の段階なので。

付録Q&A2.組織に迷惑をかけるのでは?
え?組織に迷惑をかける??大丈夫です。組織が理研なら、彼らは責任逃れのプロです。あなたが一人で責任をかぶることはあっても、彼らに迷惑をかけることは多分ありません。今日の会見でも、誰も責任を取ろうとしていなかったじゃないですか。他の組織でも、日本の公的研究機関なら大同小異でしょう。この国の人たちは、みんな責任逃れがべらぼうに上手いので心・配・ご・無・用!です。

付録Q&A3.セルやサイエンスじゃダメですか?
日本人はなぜかネイチャーが大好きです。また、ネイチャーは写真が使い回しだったり、色々論文に不備があっても掲載された実績があります。とりあえず、ネイチャーにしておくことが無難でしょう。

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