ヒロッコ:しかも、広報室よ(笑)
モリタック:おお、じゃぁ、まさに今批判されている部署に所属していたのですね!
閣下:そういうことになるな。
モリタック:閣下は、今度のSTAP細胞問題は、どう感じているのですか?
閣下:もうすでに、いくつか茶化すエントリーを書いたから、それでも見ておけ。
ヒロッコ:これとか、
なんか、STAP細胞はこんな感じになってきてしまいました
http://buu.blog.jp/archives/51430685.html
ヒロッコ:これとかですね。
ネイチャーに掲載されて有名人になるためのガイドライン
http://buu.blog.jp/archives/51430988.html
モリタック:なるほど!これを読むだけでネイチャーに掲載されるんですね!!
ヒロッコ:あんたね、閣下がこれを書いたのは、あんたの論文をネイチャーに載せるためじゃないのよ?
モリタック:やはり、私は一生ここで下っ端生活なんですね・・・
ヒロッコ:そういう意味じゃないわよ。
ノブポン:それにしても、閣下はどのように感じていらっしゃるのか、理研と産総研の両方の組織に通じている、すなわち文科省と経産省の両方に通じている立場から、ぜひご意見を拝聴させていただきたく、よろしくお願い致します。
モリタック:(ノブポン、久しぶりの登場だな・・・)
閣下:実際のところ、小保方さんの研究者としてのレベルはひどいと思うが、別に珍しいことでもないだろう。博士のレベルについては過去にこんなことを紹介したことがある。
ちょっと見かけた博士
http://buu.blog.jp/archives/50363925.html
モリタック:ははぁ、酷いものですね。
ヒロッコ:あんたにわかるの?
モリタック:もちろん・・・
ヒロッコ:わからないのよね?
モリタック:ご明察。
閣下:今回は理研、ネイチャー、記者会見と色々な要素が合わさって、大きな騒ぎになったけれど、あくまでも氷山の一角だろう。
モリタック:そうなんですね。
閣下:そんなことよりも、今回の問題の背後には大きな問題があるから、俺達はそれを共有しておく必要がある。
モリタック:やはり、色恋の戯言ですかっ!?
閣下:もちろん・・・
ヒロッコ:違いますよね(笑)
閣下:うむ。ネイチャーのサイトのトップを見てみろ。
ヒロッコ:あたたたた・・・・野依さんが頭下げている写真が・・・。
出典:Stem-cell scientist found guilty of misconduct
閣下:でもな、これは仕方ないところだ。野依さんも自業自得なところがある。
ヒロッコ:そうなんですか?とばっちりのようにも見えますが。
閣下:理研の理事長なんていうポストに就いたからだよ。
モリタック:理研の理事長がなぜまずいのですか?
閣下:それを理解するためには、理研という組織を知っておく必要がある。
ヒロッコ:研究者の楽園ではないのですか?
閣下:それはあくまでも表向きだし、研究者サイドからの視点だ。国の視点から見た理研の実態は、文科省の予算消化組織に過ぎない。
モリタック:意味がわかりません。
閣下:これを理解するためには、今度は中央官庁が何をやる組織なのかを知っておく必要がある。
モリタック:何をやるのですか?
閣下:まず、一番偉いのが財務省だ。ここは、集めた税金の使い道を決める組織だ。
モリタック:家族で言うなら、お母さんですね。
閣下:そして、他の官庁は、財務省に頭を下げて、「こんなことをやりたいのです。お金を分けてください」とお願いするんだよ。
モリタック:ええええっ、お小遣いをせびるみたいですね。
ヒロッコ:全くその通りなのよ。
モリタック:そんな仕事なら僕でもできそうです。
ヒロッコ:でも、やっているのは日本の頭脳だからね。ライバルは強力なのよ。
モリタック:しょぼーん。
閣下:みんながみんなそういうことをやっているわけじゃないけれど、キャリア官僚の中でも優秀な奴の仕事はこれだ。予算の確保という。そして、たくさんの予算を確保した官僚が出世する。
モリタック:ほほう・・・
閣下:そして、官僚の仕事はこれで終了だ。
モリタック:なるほど。
ヒロッコ:あんた、わかってないでしょ?
モリタック:え??? わかってますよ。
ヒロッコ:じゃぁ、その確保した予算を誰が使うか、言ってみなさい。
モリタック:あれ?? えーーーと、自分で使うんじゃないんですか?
ヒロッコ:使うのは、官僚の仕事じゃないのよ。
モリタック:あれれれれ?? じゃぁ、お金は誰が使うんですか?
閣下:それを使うのが、理研のような予算消化組織だ。
モリタック:おおぉぉぉ・・・理研って、そんな組織だったんですね。天からお金が降ってくるのですか!!!
閣下:そういうことだな。ただ、寝ていればお金が降ってくるわけじゃない。理研は、官僚に対して「こんなことにお金を使うのはどうでしょうか?」とアイデアを出すんだ。
モリタック:なんだか、複雑ですね。
閣下:官僚も万能じゃないからな。どうやったら財務省から予算を引き出せるのか考えているわけだが、当然、知恵袋が必要だ。
モリタック:なるほど、なるほど。つまり、子供が「プラモデルが欲しい!」と言って、それを聞いたお父さんが、子供の代わりにお母さんに「息子にプラモデルを買ってあげよう。プラモデルを子供の頃から作っていると、良い技術者になるはずだから」とか何とか言って、お母さんを説得するわけですね。
ノブポン:つまり、財務省がお母さん、官僚がお父さん、理研が子供、ということですね。
閣下:そういうことだ。そして、理研という組織は、知恵を出す子供、すなわち研究者をたくさん抱えている。お金を使うアイデアは理研研究者>文科省>財務省と流れ、お金は納税者>財務省>文科省>理研研究者と流れるわけだ。
モリタック:研究費は、もともとは税金だったんですか!
ヒロッコ:やっとわかったのね。ここでちょっと面白いのは、お金を使うアイデアの方に「納税者」が出てこないところよね(笑)。
閣下:その視点はとても興味深い。これがつまり日本古来から伝わる「由らしむべし知らしむべからず」の精神を反映しているわけだ。ただ、今回のフォーカスはそこにはないのでスルーしておく。話を戻すが、文科省は「お金をください」とお願いするのが仕事だが、取ってきたお金を自分で使うことはできない。それをやってくれる組織の一つが、理研という組織だ。だから、「予算消化組織」なのだよ。
モリタック:ふむふむ。
閣下:さて、次に、なぜ野依さんのようなノーベル賞科学者が理研にいるのか、という話になる。
モリタック:なぜでしょう???
閣下:お金の使い道を決める財務省も、そこにおねだりに行く文科省も、科学については所詮素人だ。何しろ、牛耳っているのは事務官と言われる、東大法学部出身者を中心とした文系の役人たちだからな。その上、彼らは約2年に一度異動があるので、本当の意味での専門性は持っていない。彼らは、お金を要求したり、お金を配ったりする専門家であって、特定の科学分野の専門家ではない。
モリタック:すいません、ガンダムで説明してください。
閣下:ブライトはホワイトベースの指揮官で、「アムロ、ガンダムで出ろ」とか、「ハヤトはガンキャノンだ」とか、指示を出すことはできる。でも、自分でモビルスーツを操縦して、敵を倒すことはできない。つまり、モビルスーツを操縦したことがない素人が、モビルスーツを使った戦略を考えているわけだ。ガンダムのことも、ガンキャノンのことも、書類上では知っているけれど、実際にコックピットに座って戦うことはない。
モリタック:なるほど、わかりやすい!
閣下:そうすると、モビルスーツのパイロットも、ちょっとしたおりに不満を持つことになる。「ブライトさんはモビルスーツを操縦したことがないくせに!僕が一番うまくガンダムを使えるんだ!」とか。
モリタック:それで、「もうやらないからな!誰が二度とガンダムなんかに乗ってやるもんかよっ!!」ってなるんですね!
ヒロッコ:でも、そうするとアムロは仕事がなくなっちゃうのよ。
閣下:さて、そんな不平不満が渦巻くホワイトベースにシャアが指揮官としてやってくるわけだ。
モリタック:えぇっ!ジオンのシャアが連邦の指揮官に?
ヒロッコ:たとえば、の話よ。
閣下:シャアがブライトに代わって指揮を執ることになると、シャアはモビルスーツのパイロットとしても優秀なわけだから、「現場を知らないくせに」という批判は的外れになる。何しろ、シャアは指揮官であると同時に、一流のモビルスーツパイロットだからな。
モリタック:さすがは赤い彗星ですね。
閣下:その赤い彗星が、今の理研では野依さんであり、利根川さんなのだよ。
モリタック:??????
閣下:素人しかいない財務省や文科省に理研が送り込む最終兵器が、ノーベル賞科学者だ。
モリタック:通常の三倍の予算を確保するわけですか!!!やるな!!!
閣下:実際には、こうした一流の科学者をスカウトするのは文科省だから、「財務省・文科省」対「理研」という構図ではなく、「財務省」対「文科省・理研」という構図だがな。文科省と理研は一体で、理研の意思決定組織である理事会にはいつも半分近くの文科省天下り役人がいる。
モリタック:文科省と理研はズブズブの関係ということですねぇ。
閣下:そして、文科省は財務省に対して、「日本の頭脳である野依さんが、この予算が必要だと申しております」とつきつけるわけだ。
モリタック:つまり、財務省と文科省の戦いにおいて、戦闘を有利に運ぶためにスカウトされたのが野依さんということですか!
ヒロッコ:珍しく上手にまとめたじゃないの!!
モリタック:いつものことですヨ。
閣下:そういうわけで、理研は常にノーベル賞科学者という英雄を求めているのだ。これは理研に限った話ではないけれどな。日本人がノーベル賞を取ると、そのたびに、誰が一番最初に挨拶に行くかというレースが勃発する。
モリタック:プロ野球のスカウト合戦と同じようなことが起きているのですね。
閣下:パプティマス・シロッコにしても、ハマーン・カーンにしても、一年戦争以後に登場する優秀な指揮官は例外なく一流のモビルスーツパイロットでもある。だから、理研の理事長を野依さんがやっていてもおかしいわけではない。しかし、理研にしても、あるいは文科省にしても、あくまでも国の一組織であって、日本そのものではない。
モリタック:また話が難しくなりつつありますね。私にはわかります。
閣下:野依さんがやっているのは、研究開発予算の取り合いだ。彼の敵は経産省や厚労省だ。さらにややこしいのは、文科省の中でも予算の取り合いがあることだ。理研の敵は、文科省内部にもいる。それが東大とか、京大といった一流大学だ。
モリタック:敵だらけじゃないですか!!
閣下:そうだな。そういう敵だらけのなかで、野依さんは戦っている。だが、彼は本当は研究費という名のパイの取り合いではなく、研究費そのものを増やすという戦いをするべきなんだ。
モリタック:今の日本でそんなことができるんですか?
閣下:できない。それこそが、日本の科学技術政策が抱えている大きな問題なのだ。日本を代表する頭脳が、日本のためではなく、文科省や理研といった一組織のために働いていることこそが問題なのだよ。STAP細胞問題では、理研としては「しめしめ、これで、京大・山中グループに持って行かれている莫大な予算を切り崩すことができるぞ」と思ったに違いない。彼らは、ノーベル賞科学者に加えて、「若手」とか、「女性」といったキーワードで対財務省の戦闘を有利に運ぼうとしていたフシがある。
ヒロッコ:日本国民が好きそうなフレーズですよね。
閣下:おかげで、ネイチャーのサイトのトップで、頭を下げているというみっともない姿を晒してしまうことになったわけだ。これは日本にとっての損失でもある。
ヒロッコ:では本日のまとめに入りましょう。「野依さんは、理研じゃなくて、日本のために知恵を出して欲しい」でよろしいですか?
閣下:そうだな。モリタックにわかるように説明したら、こんなに長くなってしまったよ。それにしてもこのネタ、もうすでに消費されてしまったようで、「あぁ、そんなこともあったね」という雰囲気だ。理研としても、さっさと小保方さんを処分して、忘れてしまいたいと思っているに違いない。この国民の無反省体質こそが、この国のダメなところの本質なんだろうな。
ヒロッコ:ここにも、真の意味での科学技術立国へのきっかけがあったのに、ということですね。
閣下:所詮、日本という国では、人はノーベル賞科学者を予算取りの道具にしか使えんのさ。
ヒロッコ:あと、謝罪ですね(苦笑)。
「総統閣下はお怒りです」はKindle版も発売中!「イオナ」の澤井健さんの漫画もあってお得ですよ!