2014年09月25日

『とんかつ名店絨毯爆撃』好評御礼エッセイ 揚げ方によるとんかつの違い

おかげさまで、『とんかつ名店絨毯爆撃』はこれまで出版したラーメン本よりも格段に売れ続けていて嬉しい限りである。本の質としてはラーメン本も決して低くはないつもりだが、巷に類書が溢れているラーメンガイドに比較して、優良店に絞ったとんかつガイド本がほとんど存在していなかったことが、とんかつ名店絨毯爆撃の好評につながっているのだと思う。

さて、同書の好評に感謝の意を込めて、「とんかつの揚げ方」についての見解をまとめてみようと思う。

とんかつの揚げ方は主として次の3種類である。

1.高温で短時間に揚げる
2.低温でじっくり揚げる
3.低温で揚げたあと、高温で仕上げる

1のメリットは、油のキレが良くなること、衣の香ばしさが強調されること、肉の中心部がレアになることなどである。
2のメリットは、中心部までしっかり加熱することによって、肉の旨味を引き出すことである。
3のメリットは、2の良いところと1の良いところを融合できることで、しっかり熱が通っていながら、油のキレが良く、衣の香ばしさも楽しめる点である。




実際には他の揚げ方もあって、3の類似手法として、油槽の油を少なめにして、肉を投入することによって温度を下げ、徐々に加熱して温度を上昇させている職人芸の店や、最初に高温で揚げて衣と肉の表面を固めて肉の旨味を閉じ込めておいて、後に低温でじっくり揚げる、といった店である。ただ、これらの店は決して多くはない。
全ての手法にメリットとデメリットがあって、とんかつ屋さんはそれぞれに何を重視するかを考え、揚げ方を決めている。それが、店の個性を決める重要な要素となっている。




個人的な見解では、どんなに良い豚肉であっても、生や半生の状態では旨味を引き出すことができないと考えていて、ただただ生肉の食感を楽しみたいという人以外には、1の店はあまりおすすめできない。この方向の代表は蒲田の「丸一」「鈴文」「檍(あおき)」など、林SPF豚を使った店だが、食べログなどを見るとこれらの店はかなり評価が高く、現代人には一定の評価を得ているようである。私は全く評価しない店ではあるが、もしかしたら好みに合うかも知れないので、一度は食べておいても良いだろう。それで「美味しい」と感じたのであれば、蒲田周辺に類似の店が数軒あるので、それらの店を食べ比べてみるのも良いかもしれない。




2の店は老舗有名店に多く、調理に時間がかかるので、待ち時間が長くなるし、行列店も少なくない。お客としてはちょっとハードルが高くなるのだが、多少待ち時間があっても、美味しいとんかつを食べたいという人に向いている。金額的にも、1の店よりも高額となるケースがほとんどである。このカテゴリに分類される店としては、「丸五」「成蔵」が挙げられる。




3の店は、比較的新しい店に多いのだが、良いところ取りなので、「あげづき」や「すぎ田」など、名店と言うにふさわしい店が散見される。油槽を二つ用意することからも明らかなように、調理に対するこだわりも生半可ではないので、素材にもこだわっている。おかげで、金額も1や2の店よりも高くなるだが、「多少値が張ってもとにかく美味しいとんかつを食べたい」という人にはぴったりだろう。



この記事へのトラックバックURL