夢の遊眠社時代の代表作のひとつ、「半神」を韓国人キャストで上演するということで、初日を観てきた。前から二列目、中央という良席。最近の野田作品はなかなか良い席が確保できないのだが、今回は日本人には馴染みがない韓国人俳優による上演ということで、あまり出だしが良くなかったのかも知れない。
今回の東京公演に先じて、ソウルで二週間の公演があったようで、役者さんたちにはすっかり芝居が入っていた様子。セリフは全て韓国語で、イヤホンガイドで日本語のセリフの朗読を聴く形式だった。この朗読が当初は役者のセリフと完全にかぶってしまい、何を言っているのか聞き取りにくかったのだが、何しろリアル観劇だけで10回ぐらいは観ている作品(ダブルキャストでやったこともあるので、観る回数が増えた)なので、大きな問題はなかった。途中から、イヤホンガイドは韓国語のセリフよりも若干前に読まれるようになって、大分聞き取りやすくなった。こちらは初日ということで、手探りだったのかも知れない。
さて、感想なのだが、あまり期待をしていなかったところを差し引いても、十分に「素晴らしい」と言える内容だったと思う。セリフがどうやって韓国語訳され、それをどのように演じているのか、韓国語がちんぷんかんぷんな僕にはさっぱりわからないのだけれど、それは大きな問題ではなかった。この頃の野田芝居というのは、「何言っているのか良くわからないけど、パワーが凄いし、言葉がなくても伝わってくる」ものだった。そして、そのパワーを、今日の役者さんたちは持ち合わせていた。また、言葉の素晴らしさは、役者の口からではなくイヤホンガイドからではあったけれど、ちゃんと伝わってきた。
最近はこういった芝居を観る機会がほとんどなかったのだが、遠い昔の、遊眠社の舞台を観た時の興奮と感動が蘇ってきた。そして、それを蘇らせたのが異国の役者さん達だということにちょっとした驚きがあった。
終演後、後ろを振り返ってみると、後ろの方には若干の空席が見受けられた。なんてもったいないことだろう。来週の金曜日までやっているようなので、当日券でもう一度観てみようか。
先日観た「小指の思い出」には正直がっかりしたのだけれど、その分、今日の半神ではたっぷり感動させてもらった。夢の遊眠社時代のエネルギーを感じてみたい人には、自信をもってオススメできる内容だったと思う。
以下、余談だけれど、この芝居を観ている最中に、何度も円城寺あやさん、向井薫さん、佐戸井けん太さん、田山涼成さんなどの演技が頭に蘇ってきた。意外と覚えているものだなぁ。