日本は今、どうなっているのか。景気が良くなっている印象はないけれど、本当のところはどうなんだろう。
株価を見る限り、安倍政権誕生以来ほぼ順調に上昇している。しかし、この一年ぐらいの株価上昇は日銀の金融緩和による円安政策の影響が大きい。その証拠に、日経平均株価をドル建てで見てみるとこの一年ぐらいはほとんど値動きがないことがわかる。
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それどころか、9月半ば以降は下落傾向にある。つまり、海外投資家から見れば、日本経済は下降局面にある。円安政策以上の経済効果を、アベノミクスは生み出せていないのである。
そうした中、選挙で大勝利を収めた安倍首相は、相変わらず、企業に「お願い」を続けている。
来春の賃上げに最大限の努力を要請=安倍首相
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JU04F20141216
困るのは、政権に近いところにいる大企業である。彼らの会社は、株価こそアップしているものの、別に成績は上がっていない。一方で日本のみならず、中国も欧州も、市場はシュリンクしつつあることを知っている。そうした中での、首相のお願いである。日本社会は良くも悪くも縁故資本主義なので、首相の要請を断るわけにはいかない。結局、そのしわ寄せはまず大企業に向かう。その影響は今すぐに顕在化することはないが、日本を引っ張っていくはずの(今のところ)優良な財務体質の企業のクビをじわじわと締め付けていくだろう。
日本の株価は、選挙の前後でも大きな動きはないのに、海外の原油価格といった外部の経済要因の影響を大きく受ける。これは、株価に影響を与えているものが、日本の内政ではないことを示している。簡単にいえば、株価は海外のヘッジファンドの胸先三寸といった状態である。彼らが買いだと思えば上がり、売りだと思えば下がる。そして、その意思決定がいつ行われるかはさっぱりわからない。「そろそろクリスマス休暇だから、整理しておくか」みたいなことが行われても何の不思議もない。今のところアベノミクスに乗じて株価を支えておいて、バブルをはじけさせる頃合いを見計らっているのではないか。どうせ日本の景気は実態のないバブルなのだ。一度崩れ始めればストップをかける要因はない。彼らは適当な場面で一気に空売りし、大儲けするだろう。そのタイミングは、日本企業の体質が脆弱化すれば当然早まる。そして、株価が大暴落したときに、日本企業には再生するための体力が残っていない可能性が少なからずある。それを削っているのが、安倍首相の「お願い」である。人件費は固定費となって経営を圧迫する。最終的には、大企業はそのしわ寄せを下請けの中小企業や消費者に向けるはずだが、そこまでの時間があるのかどうか。
もともと、アベノミクスは「景気が良い」と錯覚させ、同時にお金をばらまいているだけだ。実態として、日本企業の足腰がしっかりするような政策は何一つ実施していない。ばら撒いたお金が循環するならまだしも、今の世の中はばら撒いたお金がすぐに循環するような単純な構造にはなっていない。結果として、雰囲気だけで風船が膨らんできている。中にあるのは「キタイ」だけである。その上で、「お願い」をすることによって、膨らんだ風船にさらに空気を吹き込んでいる。その前途は、真っ暗に見える。こういう心配をしている日本人は、まだあんまりいないのだろうか?あるいは、もう海外に逃げてしまったのだろうか。「バブル崩壊」が杞憂なら良いのだが、もし現実になれば、日本社会は当然ながら「失われた20年」以上の閉塞状態に陥るだろう。経済は改善するための推進力を失い、何とか持ちこたえている社会保障も破綻する。少子高齢化は、それに拍車をかける。膨らんだ風船が破裂したあとには、恐らくキボウは残らない。こうなった場合、アベノミクスが、日本を地獄へ突き落としたことになる。しかし、それは国民の選択でもあったのだ。
答えは、それほど遠くない未来に明らかになるだろう。アベノミクスが成功しますように。今となっては、できることは祈ることだけだ。