<窃盗>元学生王者、スキー板盗む 小樽の大会表彰式で
スキー大会表彰式の最中に優勝者のスキー板を盗んだとして、北海道警小樽署は17日、札幌市中央区宮の森4の2、スポーツウエア会社「フェニックス」(本社・東京)社員、花田雄司容疑者(30)を窃盗容疑で逮捕した。花田容疑者はかつてスキーアルペンの選手として活躍し、2004年に全日本学生大会で優勝したこともある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150318-00000009-mai-soci
またか、という感じだ。前回は8年前である。
やれやれ、なニュース
http://buu.blog.jp/archives/50314985.html
星野芳大については「星野芳大 草津」とか、「十二屋旅館 草津」などでググってもらって2ちゃんの過去ログを読んでもらえれば結構わかると思うので(去年の秋に炎上)割愛。
そして今回である。花田雄司容疑者は中学生時代に全中回転で優勝、名門札幌第一高校時代にインターハイ回転で優勝。法政大学時代の成績もそこそこで、アルペンをやっている人間なら名前ぐらいは知っている選手だった。現在はフェニックスというスキーウェアの老舗メーカーに勤務しつつ、技術選などでもそこそこ活躍していた。そのようなトップアスリートが遊ぶ金欲しさの小遣い稼ぎで、後進の女子高校生の板を盗んで捕まったというのだからいただけない。
実は、僕も10年以上前に、上越国際での大会中に板を盗まれたことがある。犯人は不明のままだったが、保険に入っていたので、板の代金は保障された。この辺りが、スキー業界のドロドロしたところで、「スキー選手の板を盗むなんて信じられない!」と激怒する友達がいる一方で、「保険に入っていたんでしょ?ラッキーじゃん」と笑う友達もいた。
僕は県で一桁の順位になるかならないかといったレベルの競技者だったので、全盛期でもシーズンに1種目あたり1本の板を買うぐらいだったのだけれど、これが県3位以内、つまり国体レベルの男子になると、最低でもシーズンに1種目あたり2本、多い選手だと、3本、4本と購入する。チューンを同じにしておいて、大会前に滑る板と、大会本番で滑る板を変えるのはもちろん、板のチューンを変えておいたり、異なるワックスを塗った板を複数用意しておいて、本番の天候や気温に応じて板を選んだりする。毎年複数の板を買うと、当然毎年複数の要らない板が発生し、後輩に安く売ったり、粗大ごみに出したりすることになる。主要なスキー大会が終了してしまえば、あとは一番気に入っている板以外には大して愛着もない、という人もいるだろう(いや、もちろん、全ての板に愛情を注いでいる選手もたくさんいるんですよ)。そういった、愛着のない板は、大会では「下駄板」として扱われる。下駄板とは、大会バーンに行ったり、大会のポールセットをインスペクション(下見)する際に使う板で、大会中はリフト乗り場のそばなどに無造作に立てかけられている。つまり、いつでも盗める場所に放置してあるのだ。僕が盗まれた板も、こういう「下駄板」だった。
今回盗まれた板は下駄板ではなく、本番用の板だったみたいだが、「下駄板なら盗んでもそれほど大事にならない」という事情が背後にあって、たまたま盗んだのが本番板だった可能性も否定できない。僕が警察なら、「今回はたまたま露見したけれど、裏ではもっとやってるんじゃないの?」と余罪を追求するところでもある。
「ありがとう」とまでは言わないまでも、盗まれてしまってもそれほどダメージを受けない要因として、板の大切さ以外に前述の保険という要素がある。このスキー保険、今存在するかどうかは良く知らないのだが、スキー選手にとっては非常にありがたり保険だった。そもそも、制度の設計が「年に数回スキーを楽しむ」という一般的なスキー愛好家を想定した保険なので、年間70日滑る、といった競技スキーヤーを想定していない。7日滑る人を想定して作られた保険を70日滑る人が利用すれば、利用できる可能性は単純計算で10倍である。この保険が年間5000円だったりするから、競技スキーヤーはほぼ間違いなくスキー保険に加入していたと思う。滑走スピードが速いので、転倒するだけでも板が曲がるとか、ストックが折れるとか、日常茶飯事なのだから、加入しない理由がない。
#あまりに儲からないのでほとんどの保険屋はスキー保険(対人障害ではなく、物損対象の保険)から撤退したようだが、僕も地震以後はきちんと調べていない。
盗まれてもそれほど痛くないスキーヤーから板を盗んで転売する、というのは、転売ルートさえあれば大きなリスクがない。ただ、これで大損するのは保険屋で、被害届が多ければ当然調査をするだろう。頻繁に盗まれる人がいれば要注意人物としてマークするだろうし、そういったもろもろが面倒くさくなってそもそも保険から撤退したのだと思う。そうやって、スキーの盗難保険がなくなってくると、今までは「盗まれてもどうということもない」と考えていたスキーヤーたちの意識も変わってくる。盗まれたことに激怒して、その板が中古屋に並んでいるところを見かけて通報したというのも、なるほど、という感じである。
大人になってすっかり心が汚れてしまい、「盗まれて嬉しい」と考えるスキーヤーも少なくないとは思うし、今回の事件の花田容疑者も、そういうタイプのスキーヤーをたくさん見てきたのかも知れないのだが、それでも悲しい思いをする選手は大勢存在する。特に、選手が高校生となれば、話は全く別だろう。相手を選べば盗んでも良い、という話ではないのだが、高校生の板を盗んで転売し、小遣い稼ぎというのは筋が悪すぎる。
#ちなみに優勝者の片桐成実選手は北照高校で板はロシニョール。準優勝だった矢部里奈選手は札幌第一で、花田容疑者の直接の後輩。
#それにしても、時価5万円は安い。当然選手用だし、ビンディングも含めて新品で15万円前後だと思う。ビンディングは中古でもそれほど価格が落ちないので、今シーズンモデルなら10万円ぐらいの価値はありそう。旧モデルの下駄板だったのか、あるいはメーカーからのサプライ品で、その分安く申告したのか。