2015年04月15日

マジック・イン・ムーンライト(Magic In The Moonlight)

magicinthemoonlight


1928年ベルリンという注釈からスタートするのだが、ドイツが舞台なのは最初だけで、以後は南フランスのコート・ダジュールに移してのちょっとしたラブコメディである。

有名なマジシャンが若い女性霊能者のインチキを暴こうとするのだが、次から次へと彼女の超能力を見せつけられ、ついには彼女の熱烈な信者となる、というストーリーを、映像も、音響も、ちょっと古くさい感じに、1900年代半ばぐらいのテーストで仕上げている。

全体の構造はそれほど複雑ではないのだが、有名なマジシャンや霊能者という設定が特定の場面で効果的に利用される。それらの場面への誘導が巧妙なので、観る側も「あ、これを見せたかったんだな!」といった具合にすっきりする。このあたりの脚本力がさすがウッディ・アレンなのだが、わかりやすいと言えばかなりわかりやすく、序盤でラストまで展開を予想できてしまう。そうした理由で、映画を見慣れている人間にはちょっと底が浅く、砂糖たっぷりで甘いだけのケーキを食べたような気分になるかも知れない。他にも、50代と20代の歳の差に誰も違和感を挟まないとか(観ている側にはある。というか、僕は感じた)、交通手段がなさそうなところを瞬時に移動したりとか、小さな違和感はそこここに存在した。でも、そんなことを色々と指摘するような性質の映画ではない。

「良し、観るぞ」と腰を据えて観る作品ではなく、女性の友人同士で「買い物で歩きっぱなしだったので、ちょっと映画でも観て一休みしようか」と観に行くのが最も正しい鑑賞プランだろう。

ところで、この作品も、例によってタイトルから「ザ」をわざわざ落としている。「マジック・イン・ザ・ムーンライト」を「マジック・イン・ムーンライト」にすることによって一体どんな効果が上がるのか良くわからないのだが、邦題を決める人間の中には馬鹿が少なくとも一人いることがわかる。

評価は☆2つ。

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