2015年04月16日

ファストフードの賃金を1,500円にするという夢物語

なんか、ファストフードの賃金アップを求める世界的な取り組みがあるらしいんだけど、

<ファストフード>世界同時 賃上げ1500円アピール
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150415-00000072-mai-soci

正直、わけわかんない。もし仮に、日本でこれが実現したらどうなるのか、簡単に思考実験してみる。

●一つ目のシナリオ
バイト代が時給1,500円になれば、その分は価格に転嫁される。
ファストフードは定価販売が基本なので、商品価格がアップする。
例えば、マクドだけがこれをやったとする。
マクドの商品価格だけが大幅にアップする。
マクドだけが高くなれば、マクドの客は激減する。
マクドは困る。
では、マクドだけじゃなく、業界全体がこれをやったとする。
ファストフード全体が高くなれば、客はファストフード離れを起こす。
ファストフードは斜陽産業となり、店舗数が減る。
雇用が減る。
ファストフードしか働く場がない人間は失業する。
誰も幸せになっていない。

●二つ目のシナリオ
ファストフードの価格だけが高騰するから困る。社会全体で最低賃金を1,500円へと法律で規定する。
定価販売が一般的なコンビニはバイトを雇えなくなる。
家族経営にならざるを得ず、24時間営業は不可能になる。
コンビニ消滅。
そのほかの業界でも、脱バイトが進む。
バイトで食べて行きたい人は一網打尽である。
世の中全体が高コスト化するので、物価高は避けられない。
多くの人が貧困にあえぐことになる。

という感じで、短期間に社会秩序が崩壊してしまうだろう。

今、目の前にあるファストフードやコンビニは、今の法律を前提として構築されている。安易に法改正すれば、構築された社会秩序は簡単に崩壊し、それで損をするのは結局のところ、社会的弱者である。

大幅に省力化が進んだ業界として、ガソリンスタンドが挙げられる。今や、1/4以上がセルフ給油だ。ガソリンスタンド数自体、1990年頃からずっと減少を続けているが、セルフ給油所だけは増加が続いている。今の日本においてガソリンスタンドは絶対必要な施設だが、差別化が困難で、人件費の節約しか生き残りの手段がないため、店舗数の縮小と省力化が進んでいる。最低賃金が上昇すれば、同じような省力化があらゆる業態(とりわけ、コンビニのような差別化が困難な業態)で顕在化するし、すでに顕在化している業界では、加速するだろう。

今の日本の社会インフラは全て「時給900円や1,000円で働く人が存在する」ということを前提に構築されている。時給1,000円で働きたい人間がいる場合、法規制がない限り時給1,000円の仕事はなくならない。時給1,000円では嫌だ、という人で、もっとたくさんの付加価値を生んでいる(あるいは、生むことができる)という人は、もっと時給の高い仕事に就くのが手っ取り早い。

しかし、ここでまた問題が生ずる。多くの仕事は、既得権者である中・高年の無期雇用社員(いわゆる正社員)によって占められていて、能力があったとしても、それを活かす職に就けないのである。これこそが、最大の問題なのだ。また、ファストフードのバイトは、所詮、その程度の付加価値しか生んでいないということも言える。高校生でもできてしまう仕事に、それほど大きな付加価値があるとは思えない。

やるべきことは既得権者(正社員)の権利の縮小と、同一労働同一賃金の実現である。

ところが、有期雇用社員(いわゆる非正規社員)は、既得権の縮小ではなく、自分が既得権者になることを目指す。でも、それは無理。無理なのに、「できるかも?」と、希望をチラつかせて、現状維持を図ろうとするのが既得権者達の戦略である。バイトや有期雇用社員たちは早くそのことに気付いたら良いと思う。

#もちろん、高付加価値の労働ができないなら給料は安いままだけど、それは仕方ないよね。

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この記事へのコメント
記事が盗用されていましたよ。

http://blogos.com/article/110278/
Posted by chiralcapsule at 2015年04月18日 07:15
> 記事が盗用されていましたよ。

盗用ではないですね。ひとつの事象に対して、同じような指摘が起きるのは当たり前です。新聞がひとつの事件について同じような記事を書いても盗用にはなりません。表現までそっくり転記されていれば別ですが、今回の場合、表現の相同性は感じられません。
Posted by buu* at 2015年04月19日 08:25
なるほど。。
Posted by chiralcapsule at 2015年04月20日 09:13