2015年07月05日

児玉みなみさんのぐい呑

焼き物としてはあまり見かけない、枝垂れ桜のような濃い桜色に惹かれて立ち寄った。

児玉さんの表芸は多分こちらのピンク。ガラス釉にはさくらがあるし、青白ガラスも還元焼成すれば赤系の発色をするのだが、児玉さんのピンクはガラス釉っぽくない。










内側には釉薬で下絵を描いているのか、ちょっとぼやけた感じのトンボ、蝶と草。縁の部分に縦に細かく切込みを入れて、釉薬に表情をつけている。ぱっと見た感じだと、赤い釉薬を上部に掛けて、次に縁釉に織部っぽい釉薬をかけ、最後に透明の釉薬を厚めに掛けて焼いている感じ。実際には違うかも知れないのだが、複数の釉薬を重ね掛けしているのは間違いがなく、ここに行き着くまでにはかなりの試行錯誤があったと想像させられる。結果的に、とても個性的な色に行き着くことができて良かったなぁ。

こちらは裏芸っぽい、緑のぐい呑。










完成品から見た目だけで推測するなら、先に緑の釉薬を掛け、その上からマット系の白い釉薬を上部に掛け(アクセントをつけるために、全面均一ではなく、部分によって濃淡をつけているみたい)、最終的にガラス系の透明釉を掛け、白マット系の釉薬を器の表面で滑らせている感じだ。

何が面白いって、高台のぎりぎりのところまでガラス釉が迫っていて、あともう少しで作品が台無しになってしまいそうなところである。釉掛けの際には、焼成の際に垂れた釉薬で棚板に作品がくっついてしまわないように釉薬の量を調整する。この量が多すぎたり、流れやすい釉薬を使った場合には、棚板と作品が釉薬で接着してしまい、おじゃんになったりする。この作品は、その、本当にぎりぎりのところでセーフになっていて、かろうじて生き残った感じが素晴らしく、ついつい買ってしまった。

ピンクも緑も、貫入が全く入っていなくて、ガラス釉というよりは飴みたいに見えるのも面白い。何か、釉薬へのこだわりが凄くてマニアックなところがナイスである。そういえば、うちの大学にも無機化学の学科があったのだが、こういう、釉薬の勉強をしたら楽しかっただろうなぁ。

#釉薬に熱心な陶芸教室ってあるのかなぁ???

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