2015年08月15日

現代作家茶碗特集 日本橋三越本店

三越でやっている現代作家茶碗特集を見てきた。使うものを買うのが僕の主義なので、普段はお茶碗は買わないのだけれど、今回はお茶漬け用に(?)購入することにした。

◯池田省吾さん
いつもどおり織部と粉引きの二枚看板。僕はこの作家さんの織部が大好きなので、くじらの絵の茶碗を購入。内側は富士山。

◯今井完眞さん
志野焼が表芸らしいのだが、異色の作品として出していた”蟹碗”が面白かった。これは良いと思ったけれど、売約済み。でも、何に使うんだろう???

◯正親里紗さん
黒田陶苑で徳利とぐい呑を買ったことがある作家さん。常設で展示している店がないので、こういったイベントでしか見ることができない。彼女の表芸は布を丸めて成形したような茶碗やオブジェなのだが、黒田で見た時は「使わないから」という理由でスルーした。でも、その後、頭のなかで何度か思い出すうちに、そのユニークさに対する評価が上昇。ということで、より曲線を強調したデザインの茶碗を購入。

◯織田絵美さん
福島武山さんのお弟子さんのひとり。今回出品していたお茶碗はどれも力作。パッと見て白より赤が目立つというより、ほぼ真っ赤に見える描き込み具合。ただ、様々な九谷赤絵作家において、織田さんのカラー、独自性がどのあたりにあるのか、まだ僕には理解できていないので、今回はスルー。

◯河端理恵子さん
福島一門の中では最も個性的な作品を描いていると思う作家さん。今回は模様タイプ2つと夏野菜、鳳凰、魚の5つを出品。白と黄色の色違いの模様タイプは売約済みだったので、今回は正面に鳳凰、向こう正面に花を描いて、鳳凰が飛んだあとに花が咲いている様子を表現した茶碗を購入。

◯小林佐和子さん
今回参加している作家さんの中では技術的に一番驚かされた作家さん。描かれている絵は雀やもみじ、竹など、それほど新しい感じがないのだが、それを練り込みで作っているところが異常(笑)。練り込みは金太郎飴を作るのと同じ技法だが、金太郎飴は色付けした飴をまいてから縦方向に伸ばす。なので、ひとつひとつのパーツが小さくなる。一方、陶芸の練り込みは色付けした土をまいたあと、板作りで横方向に伸ばすので、パーツがふくれる(はず)。それなのに、小林さんのは全然ふくれた感じがない。また、板作りで作った板を巻いて、底の部品を付け足す工程のはずなのだが、その接着が非常に丁寧で、ちょっと見ただけではわからない。この技術はとても興味深い。今回はスルーしたけれど、引き続き注目していきたい。

◯平石ミナさん
蜘蛛や幽霊を描いたり、歯科矯正をデザインしたりと、モダンアートっぽいアプローチ。凄く面白いと思うのだけれど、手に持つとかなり重いのが残念。茶碗は見た目重厚で手に持って軽いのが一番。ただし、これは伝統的な価値観で、平石さんはそういう価値観の領域にいないのだろう。

◯水元かよこさん
巨大な角が生えていたり、水平に四方向に角が生えていたりして、使えない(笑)。「これなら使えないでしょ?」という挑戦が根底にあるようで面白いのだが、僕が入手してもすぐに壊してしまいそうで、怖くて買えない。

参考までに、巨大な角のぐい呑の写真。



◯見附正康さん
現代若手陶芸作家では一番人気だが、その実力は非常にわかりやすい。実物を見れば「あ、この人は凄い」とすぐに理解できる。もちろん欲しかったけれど、抽選に外れたので買えず。

◯牟田陽日さん
見附さんほどではないものの、人気作家のひとり。好奇心旺盛なのか、飽きっぽいのか、とにかく芸の幅が広く、今回もかなり多様なラインナップだった。個人的には赤絵や伝統的なデザインを融合した赤絵春花尽くし茶碗が良かったのだが、売約済み。牟田さんの作品は方向性が多様なので、自分の中で簡単にこれが一番、これが二番とランク付けできてしまう。その中で一番のが他人の手に渡ってしまうと、二番以降を買うくらいなら、貯金しておいて次回に期待しようと思ってしまう。

◯吉村茉莉さん
ベースになっている磁器の形や色に特徴があるのが吉村さんの赤絵。もちろん、絵の技術も素晴らしいのだが、やはり土台になっている磁器の影響を強く受ける。今回は孔雀の絵が素晴らしく、これは良いなぁと思ったのだが、実際に手に持ってみると驚くほど重い。他の2つは重くないのになぜ?という感じでスルー。

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