明治天皇に謁見しに来たオスマン帝国(今のトルコ)の軍艦が、その帰途に台風によって遭難した事件を描いている。
話としては「へぇ」という感じなのだが、まず脚本が稚拙。日本語を喋ることができない外人に向かって、村で唯一英語を喋ることができる医者が「まだわからないのか!」と叱責する場面は失笑しかない。お前が教えなければわかるわけないだろ。こういういい加減なセリフが散見されて、観ている途中でやれやれ、という感じになってくる。また、セリフだけでなく、行動原理のわからない登場人物が何人も現れて「何だかなぁ」という気分になってくる。飲んだくれている医者やら、空港でかばんを叩きつけるサラリーマンやら、色々と薄っぺらい登場人物たちが映画を盛り下げる。
次にイマイチなのが音楽。セリフでしらけていると、嫌でも音楽が耳に入ってきてしまうのだが、このできが悪い。担当の大島ミチル氏は日本アカデミー賞の常連だが、あまり良い印象がない作曲家・編曲家である。
後半、とってつけたようにイラン編があるのだが、ここで和歌山編で主要人物を演じた役者たちが登場する。このあたりのあざとさは製作者の力量のなさなのか、あるいは俳優の確保が難しかったのか、どちらにしても効果的とは言えない演出だった。編集もイマイチだったのだが、監督の絵作りだけはなかなか上手だったと思う。ただ、引き出しの数はあまり多いとは言えず、「またこのアングルか!」と思うことも多かった。でも、今から考えるとお金がなくて色々できなかったのかも知れない。
最後に「法律の整備が悪くて自衛隊が日本人を救助できない」というあたりでは安保法制についての政治色が色濃くて違和感ありまくりだったのだが、「『海難1890』を成功させる会」という怪しい組織があって、その最高顧問には安倍首相が就任しているらしく「なるほど」(失笑)という感じである。あくまでも想像だが、口出しをせずに金だけ出したのなら、もっと良い映画になっていたのではないか。
池袋の地下でチケットが700円で叩き売りされていたので観てきたのだが、素材は良かったのに、色々と残念なできになっていた。評価は☆半分。
「『海難1890』を成功させる会」の参考記事:内野聖陽主演、安倍首相助演!映画外交“アベノシネマ”だ!
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20150113-OHT1T50000.html