2016年02月06日

NODA・MAP 第20回公演『逆鱗』

gekirin


まず、水中の魚たちの群泳を表現したアンサンブルがとにかく見事。これによって主要登場人物たちの登場、退場が実に効果的に演出されていた。巨大な水族館で一度でも小さな魚の群泳を見たことがあれば、「おお」と感心すると思う。

ダジャレ(野田秀樹を表現する際はなぜか言葉遊びと言われるのだが、普通に言えばダジャレ、オヤジギャグだと思う)は健在。「起」「承」をダジャレで引っ張り、途中で暗く真面目な話に転調するのがこのところ続いている野田テーストで、本作もその方程式で進む。暗転の方向は「人魚」からはおおよそ想像がつかない。え?こんな話になっちゃうの?というのが正直なところ。そのコントラストが鮮明なだけに、野田秀樹のメッセージが一層強烈になっている。忘れてはならないことがあるのだよ、と。ただ、その鮮明さと、後半のメッセージの深刻さゆえ、前半と後半がほとんど乖離してしまった印象がある。これはもしかしたら複数回鑑賞すると別の印象になるかも知れない。

役者では松たか子と阿部サダヲが非常に良かった。銀粉蝶や野田秀樹は平常運転で安心して観ていることができる。ちょっと見劣りがしたのは井上真央で、一杯一杯な感じ。余裕がなくて、観ていて別の意味で緊張してしまう。公演スタートから間もないこともあってか、セリフをかんだり、変なところで言葉を切ってしまうシーンが何度も見られたのだが、まぁ、芝居だから仕方ないだろう。

それにしても、最後の松たか子は素晴らしいの一言。あの声を聞かせるための2時間だった。

今回は6列目で観たのだが、ラストシーンは後ろの方から観た方が印象的なのではないだろうか?

3月にもう一度観る予定。

出演:松たか子 瑛太 井上真央 阿部サダヲ 池田成志 満島真之介 銀粉蝶 野田秀樹
東京公演 東京芸術劇場プレイハウス 2016年1月19日(金)〜3月13日(日)
大阪公演 シアターBRAVA! 2016年3月18日(金)〜3月27日(日)
北九州公演 北九州芸術劇場 大ホール 2016年3月31日(木)〜4月3日(日)

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