2016年04月25日

五輪エンブレム選考過程で発見したグラフィックデザイン界の希望

東京五輪とパラのエンブレムが決定した。この件についてはこのブログでは下記で短い印象を書いたのだが、

http://buu.blog.jp/archives/51521433.html

この件に関連して、前回の出来レースの時の審査員の一人であった平野敬子氏が次のブログでとても興味深い論考を展開している。

1対3の構図 - 「A案」VS「BCD案」
http://hiranokeiko.tokyo/?eid=66

要すれば、「プロ的な視点からは今回の選考はA案の出来レース」という内容である。が、この短いまとめはリードとして受け取って、上記のエントリーを読んでみて欲しい。一般投票では人気のなかったA案に決定したことを併せて考えると、とても味わいのある内容である。

ちなみに、このブログではエンブレムデザインの選考について詳細を告発していて、全てのエントリーが充実している。

HIRANO KEIKO’S OFFICIAL BLOG
http://hiranokeiko.tokyo

信頼が失墜した日本のグラフィックデザイン界だが、パンドラの箱に残されたもののように、ちゃんとしっかりした人が残っていたようだ。僕はこの業界についてはほとんど知識がないので、この一件までは全く知らない人だったのだけれど。このブログの文章は、誰でも理解できるような平易な文言を選び、自身のプロ意識とプライドを最大限に反映し、加えて、大きな悲しみを盛り込んだ名文だと思う。今後、デザインに関係する人はもちろん、東京五輪に関わる人も、いや、全ての日本人が読んでおくべき文章だと思う。

僕も、2004年のライフサイエンスサミットで「2010年バイオ市場25兆円の実現は無理」と指摘して会場内の全員に冷水を浴びせて孤軍奮闘したことがあるのだが、その後、僕自身は日本のバイオ業界のムラ体質がすっかり嫌になってしまい、今では距離を置くようになってしまった。

参考:http://buu.blog.jp/archives/51251071.html

平野さんには引き続き頑張って欲しい。五輪のエンブレム云々ではなく、日本のグラフィックデザイン界のために。日本は(この国は、と書いたけれど、あ、もう僕は日本にはいないんだった、と思い出して書き換えた。今、東海岸は朝の6:45)、出る杭は全力で叩く国だから。一つ残念なのは、平野さんがブログを開始した動機の中に

これからはじまるエンブレム審査がより良い結果を生むために

出典:責任がとれる方法で http://hiranokeiko.tokyo/?eid=1

というものがあったのにも関わらず、相変わらず人気のない、そして選考前に「出来レース」と状況証拠から指摘されていたエンブレムが選ばれたことである。

この記事へのトラックバックURL