2016年08月06日

羽生の時代は終わるのか?

こっち(米国)に来て以来、将棋の情報に触れることが激減していたので、今日、まとめて読んでみたのだが、今は羽生の衰退期にあるようだ。ここ20年ぐらい、将棋界は羽生を中心にまわってきた。単純に将棋界の最多タイトルホルダーを「時代の覇者」と考えて名称をつけていくとこんな感じになる(冠数は羽生の保有していたタイトル数)。

  年  冠   時代
1989 1 中原・谷川時代
1990 1 谷川時代
1991 1 谷川時代
1992 3 羽生時代
1993 4 羽生時代
1994 6 羽生時代
1995 7 羽生天下統一
1996 5 羽生時代
1997 4 羽生時代
1998 4 羽生時代
1999 4 羽生時代
2000 5 羽生時代
2001 4 羽生時代
2002 3 羽生時代
2003 2 谷川・森内・羽生時代
2004 4 羽生時代
2005 3 羽生時代
2006 3 羽生時代
2007 2 佐藤・羽生時代
2008 4 羽生時代
2009 3 羽生時代
2010 3 羽生時代
2011 2 渡辺・羽生時代
2012 3 渡辺・羽生時代
2013 3 羽生時代
2014 4 羽生時代
2015 4 羽生時代
2016

中原の時代が終了し、短かった谷川の時代のあと、延々と羽生の時代が続いている。その中でも時々羽生の衰退期は存在した。羽生と森内が拮抗する時代があって、それもやがて森内が調子を落として、羽生の時代が復活した。羽生が渡辺に勝てなくなった時期があって、そのあと渡辺が調子を落として羽生の時代が復活した。

1991年に谷川の時代が終了して以後、谷川、森内、佐藤、渡辺が単独で最多タイトルホルダーになったことはない。

ちょっと驚いたのは、今年、羽生が竜王戦本戦トーナメントへ出場できなかったことだ。これは2006年以来10年ぶりだ。その直後に羽生は時代の覇者の座を降りかけて、復活した。

調子を落としても、そのたびに復活してきた原因のひとつは、多くの危機が、スペシャリストの登場によって起きていたことにあると思う。最初のうちはスペシャリストの戦法の勝率が高く、タイトルホルダーとなる。ところが、数年でその戦法に対する研究が進んで、勝率が落ちる。新しい時代が来るかと思ったのだが、その前に対策が進んでしまい、数名のトップ棋士の中に埋没していく。こうして、ジェネラリストとして勝ち星を稼ぐ羽生の時代が復活してきた。羽生は今年の初めに名人戦で佐藤天彦に負けたが、彼もスペシャリストである。

2016年の状況を見てみると、まず、名人戦で名人位を佐藤天彦に譲った。棋聖戦はなんとかフルセットでタイトルをキープ。王位戦は木村八段との棋戦が進行中で、1勝1敗のタイである。王座戦は羽生と糸谷の対戦に決まっている。竜王戦は羽生の敗退が早々に決まっていて、タイトルへ最短距離にいるのはタイトル保持者の渡辺だ。王将戦はまだ挑戦者決定リーグが始まっておらず、先が読めない。棋王戦は一回戦で羽生が破れており、羽生が挑戦することはない。つまり、羽生が2016に取ることのできるタイトルは最大で4(棋聖、王位、王座、王将)、最小で1(棋聖)である。最多タイトルホルダーで「時代」を定義するなら、タイトル数が1でも時代が継続する可能性はあるのだが、果たして羽生の時代は継続するのだろうか。それとも、1992年から長く続いた羽生の時代が、いよいよ終焉を迎えるのだろうか。

ちょうどコンピューターが人間に対しての優位をほぼ決めつつある今、人間の時代と羽生の時代が同時に終了するのかもしれない。