「君の名は。」聖地巡礼に沸く町の名は? 映画そっくり
http://www.asahi.com/articles/ASJ9P6VQVJ9POHGB00Y.html
巡礼はともかく、映画にあった風景とそっくりな景色が実際に存在しているのは、映画の背景の作画でリアルトレースを多用していたことが原因だろう。実際にトレースしているかどうかは不明だが、僕はこの映画を観ていてすぐに、あぁ、トレースしているんだろうな、と感じて次のようにレビューに書いた。
写真をトレースして作画することによって背景を描く手法はどこかのアニメでも前に見かけたのだが、精緻な背景を配置することによって、フィクションとノンフィクションの境界をぼかしているところがとても効果的だった。
出典:君の名は。
http://buu.blog.jp/archives/51531257.html
「リアルトレース」という言葉は知らない人は知らないだろうが、写真を下敷きにしてなぞる手法で、これはアニメではなく漫画だが「浦沢直樹の漫勉」のシーズン1で浅野いにお氏がやっているのが紹介されていた。
僕の場合はAdobeのアプリ、Illustrator(イラレ)の技術を習得する手段として勉強したことがある。このおかげで、わずか2ヶ月ほどでイラレの基本的な技術を習得できたので、遊びながら勉強できて一挙両得だった。ちなみに、作品はこんな感じ。
この絵は、イラレでこんな感じに描いている。
僕は人物を描いたけれど、物でも、風景でも、同じように描くことができる。こうした作画アプリにはイラレの他に同じくAdobeのPhotoshop(フォトショ)があるのだが、イラレとフォトショの作画工程は全く異なっていて、イラレの最大のメリットは画力や画才が要求されないことである。そういう、才能が不要なところは、全く絵の勉強をしたことがなく、子供の頃から絵が下手で有名だった僕ですら、すぐに上のような絵が描けてしまうことで証明されている。
イラレの作画は、ベジェ曲線という線を操作するのだが、これは点と、それを始点としたベクトル(方向線)によって制御される。こう書くととても難しそうだが、実際にやってみればそれほど難しくない。ただ、一本のまっすぐな線を引くにもいくつかの工程があって、操作はフォトショよりも多少煩雑になる。乱暴に分類すると、感覚的なフォトショ、論理的なイラレ、という感じである。
イラレの作画は、そこそこの性能のパソコンとイラレさえあれば絵が描けてしまうので、ちょっとした趣味として楽しむのに良い。人に迷惑をかけるでもないので、イラレを使える環境にある人なら誰にでもオススメできる趣味である。
ちなみに僕が勉強するときに読んだのは次の二冊。これさえあれば、ほぼ問題ないと思う。
上の本はベジェ曲線を全くいじったことのない人向けで、ど素人からのスタートでも多分問題なく操作が身につくと思う。下の本はリアルトレースの教科書みたいな本で、これ一冊でプロ級の絵も描けるようになるはずだ。基本の習得が一番大事で、それを短時間でやってしまいたい人にオススメだ。これでは物足りない、となってしまったら、以後はネットで色々と検索すれば良いはずである。
ちなみに君の名は。も、浅野氏も、ただトレースするだけでなく、それと、自身のオリジナル画像を複合させて、新しい価値を創り出していた。趣味を芸術に昇華させる場合には、ただトレースするだけでなく、さらなる工夫が必要である。
ともあれ、「君の名は。」を観て、ああいう風景画って面白いな、と思った人はぜひどうぞ。