2018年08月02日

日本は産休が長すぎるんじゃないの?

東京医大の女性差別問題について。僕自身も約20年ほど前、東京医科歯科大学の入試で年齢差別と想像される差別で不合格とされた経験がある(センター試験で821/900、二次試験は小論文と面接のみ、予備校の合否判定ではA判定にも関わらず不合格)ので他人事ではないと思って注目しているのだが、その中で、

同大出身の女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れがあることが背景にあった

出典:https://www.yomiuri.co.jp/national/20180801-OYT1T50132.html

という指摘があった。アホか、離職しなくても済むような環境を整備しろよ、と思うのだが、ここでは女性のおかれた環境を直接的に嘆くのではなく、あえて「産休が長すぎるのでは?」という問題提起をしてみたい。N=1なのが残念だが、我が家がちょうど2ヶ月前に出産したので、その経験をもとに書いてみる。

我が家の場合、妻が出産のために入院したのは出産の1日前(実際には夜中の2時過ぎに出産したので、正確には2日前だが)で、その前日まで職場に行っていた。出産は硬膜外麻酔による無痛分娩で、出産後の当日には自分でトイレに行っていたし、2日後には歩いて退院した。そして、10日後には職場復帰した。仕事を休んだのは合計で約2週間である。

日本では現在予定日前6週間、産後8週間の合計14週間で産休取得できるが、これは長すぎる印象がある。我が家のケースと比較すれば、約12週間、3ヶ月も余分に休んでいることになる。我が家は短すぎるとしても、例えばNIHなら、出産の前後8週間が産休で、日本よりも1ヶ月以上短い。

もちろん、短期間で職場復帰するためにはいくつもの条件がある。一番大きそうなのは日本ではまだ一般的とは言えない無痛分娩である。「硬膜外麻酔は危険だからやりたくない」という女医はさすがにいないだろうが、麻酔医の腕が悪いからやりたくない、という女医はいても不思議ではない。また、苦労して産んでこそ出産という根性論も日本では根強いと聞いたことがあるのだが、こちらについては「馬鹿じゃないの?」で終了である。無痛分娩で母体に対する負担を軽くすることは、社会復帰を早める上では必須だろう。

他にも、満員電車で妊婦が通勤するのは大変だろうし、予定より早く産気づいてしまったときの対応も整備しなくてはならない。産後も、生まれた子供に3時間ごとに授乳したり、オムツを交換したりしなくてはならず、女性が勤務を再開するなら、誰かがこれをやらなくてはならない。我が家の場合は僕がこの担当者だが、日本なら親戚に頼むとか、他の手段もありそうだ。

萩生田光一という頭の悪い政治家は「0〜3歳児の赤ちゃんに『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、どう考えたって『ママがいい』に決まっている。お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げをしていかないと、『男女平等参画社会だ』『男も育児だ』とか言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない」と語ったそうだが、

出典:萩生田氏「赤ちゃんはママがいいに決まっている」
https://www.asahi.com/articles/ASL5W4F1ZL5WTNAB00D.html

「お前が実際に育児をやってもいないくせに、何を生意気なことを言っているんだ、どこのどいつだ、こいつを当選させた奴は」と思う。なぜなら、これもN=1で申し訳ないが、我が家のHoltby隊員はまだ視力が不十分なので誰がミルクをあげても同じように喜んで飲むし、オムツの交換だって誰がやっても同じだ。多分、萩生田光一は自分でこういう子供の世話を自分でやったことがほとんどないのだろう。全部女性に任せっきりでもそれは各々の家庭の勝手だが、やったこともないのに「ママがいい」と断言するのは大きなお世話である。萩生田光一のオツムを誰かが交換してやるべきだろう。

また、女性の社会復帰を早めるためには、男性の育児休暇を取りやすくすることも必要だ。「今日は子供の面倒を見る日なので、早退」などはプレミアム・フライディなんかよりよっぽど先に一般化しなくてはならない。

出産のための産休は2週間で十分、とまでは言わないが、人間の生理だけを考えるなら、1ヶ月あれば十分なのではないか。しかし、今、日本でいきなりそれが実現できるかと言えばそうではない。そのための環境が整備されていない。休みたくなくても休まなくてはならない現状もあるだろう。

そういえば、以前勤務していた三菱総研では、女性の待遇が素晴らしく、年子で子供を出産すると、2年近く休暇が取れるという話を聞いた。2年休めるのは素晴らしいのかもしれないが、2年のブランクの後、普通に職場復帰できるとしたら、それはそれで奇妙に感じる。まともな仕事なら、ブランクは短ければ短いほど良いはずだ。

我が家の場合、まだ生まれてから2ヶ月なので、これから色々な問題が発生するかもしれない。ただ、2ヶ月の時点で言えるのは、女性にもっと活躍してもらいたいなら、産休を長くするのではなく、産休が短くて済むような環境整備を進めたらどうか、ということだ。

#とはいえ、満員電車による通勤は日本独特の状況で、大都市への人口偏在を改善しないことには解決が難しいのだが。これはフレックスタイムの充実で対応可能だろう。