2019年11月01日

鰭崎英朋について

鰭崎英朋の絵を入手したと自慢したら「だれ、それ」と言われたので、ちょっと解説。

鰭崎英朋は明治の終わりから大正にかけて活躍した美人風俗画家で、鏑木清方と人気を二分する作家だった。同時代の日本画家には他に山村耕花や鳥居清忠などがいる。

その後、鏑木は絵画に向かったのだが、鰭崎は挿絵、版画を守ることに執着し、結果的に人気も忘れ去られてしまった。しかし、昭和54年に発行された現代日本美人画全集全12巻の「名作選IV」には、月岡芳年、尾形月耕、棟方志功、橋口五葉、鳥居言人、徳力富吉郎、川瀬巴水、笠松紫浪などとともに紹介されている。

平成21年に、根津にある弥生美術館で生誕130年を記念して開催された鰭崎英朋展にあわせて「妖艶粋美」という本が出版され、埋もれ、忘れられていた挿絵作家に、再び光が当てられることになった。




鰭崎の主たる作品は明治、大正に集中していて、この本でも、昭和の作品で紹介されているものはほとんどない。鰭崎は昭和43年に没しているので、後半の作品は印刷物以外はあまり世に出ていないのかもしれない。

挿絵、版画は印刷物なので、どうしても絵画に比較して一段下に見られてしまうのだが、鰭崎の絵のレベルは決して低くなく、鏑木と比較しても劣っているとは思えない。しかし、そうは言っても、ラベルが大切なことも確かで、どこの誰が描いたとも知れない絵は、ほとんど見向きもされない。加えて、この絵は状態が良いとはお世辞にも言えない状態だったし、とにかく大きくて、保管場所に困る。










そういうわけで、幸運にも入手できたのである。