録画してあった庵野氏の特集を観てみた。
なるほど、面白い。取り巻きが振り回されているのが。
要すれば、庵野氏というのは「たたき台」を叩いてアウトプットの質を高めるタイプのクリエイターなのだ。だから、叩くものがないと困ってしまうし、叩くものが供給されればいつまでも叩く。そういう作業がずっと続いていたことがわかった。
一連のエヴァの作品は、まずテレビシリーズができて、それを叩いて旧劇場版ができて、旧劇場版と他の過去の関連作を含めて叩くことによって、新劇場版ができた。新劇場版だけ見ても、まず取り巻きの皆さんが最初の叩き台を作って、それをもとにブラッシュアップを進めていた。時には「もう全部なしで、やり直そう」となるのだが、実際には破棄された前バージョンはきちんと叩き台にされていたはずだ。少なくともまっさらな更地に全く新しい家を建てたわけではない。
僕がときどきいうことに、「60点のものを作るのと、それを80点にするのと、90点にするのと、95点にするのと、98点にするのはどれも同じくらいの労力を必要として、100点に近づけるのはすごく大変」というのがあるのだが、庵野氏は、時間が許すなら、延々とブラッシュアップを繰り返さずにはいられないようだった。おかげで、とてもマニアックな、煮詰まった完成品を観ることができた。ただ、取り巻きの苦労はさぞかし大きかったことだろう。
本当は、新劇場版も叩きたいのだと思う。でも、それを自分ではやらないと宣言した。とても個人的な作品だったエヴァから手を放す。これはとても勇気のいることだと思う。そして、果たして成功するのか。