戦前から言っていたのだが、結局森保の戦略のなさ、戦術のなさが原因で日本サッカー史上最強にして、もっとも恵まれたU24日本代表は4位に終わった。おそらく、今後数十年、これだけのチャンスは来ないだろう。
メキシコ戦での敗因は、この試合だけにあるのではない。この試合に至るまでの戦略上の問題だ。つまり、選手の起用方針である。出場選手をほぼ固定してしまい、特定の選手、特にミッドフィールダーをヘトヘトに疲れさせてしまった。にもかかわらず、3位決定戦になってもそうした疲弊が目立つ選手に頼ろうとする森保は無能以外の何者でもない。
中二日で連戦が続くのは分かっていたのに、選手交代が遅れる。挙句延長戦まで戦うことになったのだから、選手達のパフォーマンスは落ちる一方だった。疲労すれば、トップスピードが落ちるし、スピードを維持できる時間も短くなる。最初の一歩の駆け出しも遅れるし、スタミナもなくなる。体力だけでなく、頭脳も疲労して判断力が鈍くなっていく。試合を追うごとに相手は強くなっていくのに、選手達のパフォーマンスは落ちる一方なのだ。これでは勝てるものも勝てない。
森保の戦略は「とにかく目の前の試合を頑張れ」というものだ。実は、この森保の方針は前からわかっていた。一昨年のアジアカップでも同じ過ちを犯していたのである。
久保と堂安が一歩抜きん出た選手であることには同意する。また、リーダーとしてオーバーエイジから選ばれた吉田も代えを見つけるのは困難だろう。しかし、他の選手はいくらでもなんとでもなる。ところが、森保は選手を休ませることをしなかった。
また、戦術面では、林の重用が足を引っ張っていた。テレビの画面から見るだけなので評価には限界があるのだが、それでも林が相手のオフサイドラインをきちんと見極められずにいることは明白だった。「おまえ、そこにいたら最初からオフサイドだろ」というポジショニングで再三オフサイドを取られて攻撃の流れを切ってしまっていた。攻撃力ではなく運動量を求めたのかもしれないが、それなら林以外のミッドフィールダーで良かった。結局得点パターンはほとんど堂安と久保の個人技とコンビネーションに頼らざるを得なくなっていた。
ニュージーランド戦は相手の選手が決定機に足を滑らせるという幸運によってPK戦に持ち込めたのだが、本当なら負け試合だった。延長に入って田中を板倉に代えて守備が安定したことからもわかるように、この試合は田中を完全休養させるべきだっただろう。また、それに続くスペイン戦、メキシコ戦は常に押し込まれてカウンター狙いにならざるを得ないことがわかっていたのだから、三苫や前田の使い所だったはずだ。ところがここでも森保は動くことができなかった。スペイン戦で久保と堂安を2枚替えしたことについて批判する向きもあるけれど、とんでもない。ミッドフィールダーは最初から守備に追われることが分かっていたわけで、前田や三好の守備力は少なくとも疲労困憊した久保よりはずっと上だった。どうせ押し込まれる時間が長くなるのだから、ボールを奪って攻撃に転じた時に突破力のある三苫やスピードのある前田なら、もっとチャンスを作ることができただろう。三苫は開幕直後はコンディションが悪かったのかもしれないが、問題がなかった前田にはもっと長い時間を与えてあげる必要があったと思う。
森保には、選手を生かす戦術の引き出しが決定的に少ない。自分の考える戦術に選手を配置するだけで、配置する選手のバリエーションも少ない。毎週一試合のJリーグならこれでも戦えるけれど、中二日で5、6試合を戦うような五輪やワールドカップで良い成績を出すのは不可能である。東京五輪は、グループリーグは選手の力で勝って、決勝トーナメントは監督の采配力で負けた。
今、Jリーグで良い成績を残しているフロンターレやマリノスの特徴として、選手の交代が上手ということが挙げられる。両チームは選手に戦術が浸透していることも大きいが、試合の中での選手の疲労をうまくマネージメントしている点も見逃せない。マリノスで言えば、フォワードはエウベル、オナイウ、前田、仲川、レオセアラを取っ替え引っ替えしているし、ボランチの喜田と扇原もキックオフから並んでいることはあまりない。コロナのおかげで交代枠が5枚あるせいで、監督のマネージメント力は一層大切になっている。そして、日本の五輪代表はそこが最大のウィークポイントになっていた。
ところが、である。サッカー協会は森保を相変わらず高く評価しているらしい。これは日本サッカー協会が機能していないことのあらわれである。サッカー協会は2016年から長いこと田嶋幸三の独裁が続いている。こいつは安倍晋三と似た独裁者タイプの人物で、政敵には徹底的に冷や飯を食らわせ、お友達で周囲を固めてしまう。おかげでまともな人選ができなくなっているのだろう。選手のレベルは順調に上がってきているのに、サッカー協会と、協会が選ぶ監督の質が落ちる一方なのは残念なことである。