2022年11月19日

すずめの戸締まり

新海誠監督の最新作は宮崎、愛媛、神戸、東京、宮城を巡っていくロードムービーである。

仲良し二人組を描くバディムービーなので「グリーンブック」的でもある。そして今どき珍しいラブストーリーでもある。

テーマは東日本大震災。突然震災で亡くなった人たちの失われてしまった日常を考えさせられる。これはなんとなく感じるのではなく、設定によって強制的に考えさせられる仕組みになっている。「忘れてはいけないことがある」というメッセージはきちんと伝わってくる。テーマについてはあまり語りきらない、でも語り足りないわけではなく、良いあんばいである。そういう意味で3.11を覚えておくための名作アニメになるかもしれない。

ただ、脚本に違和感はある。ある登場人物が突然馬鹿笑いしたり、かなり能力が高そうな神様が異能を発揮するのは一度きりだったり、2人が出会う偶然が凄すぎたり。一番違和感があるのは行動原理が謎なこと。

その二人が道端ですれ違って、声をかけるか?廃墟に行くか?船に乗るか?

そういうおかしなところを納得させられることができるかどうかが脚本家の腕である。つまり、ラストまで見て「あぁ、だからあの行動を取ったんだ」と納得できるなら腕が良い。僕は違和感が残った。

ただ、これは「天気の子」でも同様で、新海誠監督ってそういう脚本を書く。以下は天気の子の僕の感想の引用である。

「広い東京で、そんなこと起きないでしょ」という偶然が何度も起きる。偶然に頼らないと説明できないようだと、観ていてしらけてしまう。物語はどこまでも必然であるべきで、使って良い偶然は多くて一度までだろう。


偶然の質は違うけれど、違和感の質は同じである。ただ、ここは僕の感受性の問題かもしれない。ラストまで観て、「ああ、そういう理由があって、ああいう行動を取ったんだ」と納得できるのかもしれず、もう一度観たらまた違う感想になる可能性もある。

それから新海監督の特徴は洋画的な音楽の使い方だけど、本作はちょっと音楽に違和感がある場面があった。

ともあれ、3.11がテーマなので、色々と考えさせられる作品ではあった。

評価は星2つ。