「ザーッと降って・・・」(以下、ザー)に続いてはしご。というか、二公演連続だった。
連続上演だったので、違いが良くわかる。「ザー」は大声が多くてちょっと疲れてしまったけれど、こちらは適度なバランスだった。おかげで演技に集中できる。「ザー」ではたびたび舞台後方で音楽を担当している秦さんに目が行ったのだが、本作ではそんな暇はなかった。演技、照明、音楽、舞台装置が一体となっていて、なかなか見事だったと思う。
ストーリー上は「どうして夢をコントロールできたのだろう」「死体はどうしたのだろう」という謎が残されたけれど、それほど気にならない。「ラストはこうなったら陳腐で嫌だな」と思ったところからは外れて行ったけれど、「こうなると良いな」という展開にも落ち着かず、なんとも微妙なところに着地したのだが、まぁ、それはそれ。
役者は正直知らない人ばかりで知っている人は一人だけだったのだけれど、役所広司に少し似ている人と、大泉洋に少し似ている人がいて、何となく他人行儀ではなかった。「ザー」と同様、声が届かないといったこともなく、終始安心して観ていられた。
評価は☆2つ半。あと5回ぐらい上演して、役者が慣れてきて、脚本にも少し手を入れたら、3つになりそう。
この芝居が4回でおしまいというところに今の演劇界の問題があると思う。せめて10回ぐらいはやれないとどこかに無理がかかって、継続が難しくなるだろう。もちろん、4回なら動員できても、10回では動員が難しいということなのだろうが。客を呼べる可愛いだけ、カッコいいだけの役者を揃えても舞台の質が下がるだけだし、本当に難しい時代である。こういう環境において、若い役者になんとかチャンスと成長の場を与えている秦さんは素晴らしいと思う。一方で僕はこうやって劇評で支援しても、もう公演は終了していて意味がないのが残念だ。
芝居の質はたいてい三回目ぐらいから良くなっていく。この公演では、主人公が何度も噛んでいて、ちょっと気の毒だった。もうちょっと回数を重ねないと、脚本も、役者も、熟成が進まない。できれば10回上演を目標に次の公演を計画して欲しい。
#実際にはもうすでに役者も場所も回数も決まっていそうだけど。