先日は児童虐待防止について書いたけれど、
埼玉県の児童虐待禁止条例に関する賛成の立場からの雑感
http://buu.blog.jp/archives/51637886.html
今度は性犯罪者についてである。
先日、日本版DBSの臨時国会提出を見送るという報道があった。
「性犯罪歴なし」確認する「日本版DBS」、法案の提出を見送り…少子化相「来年以降早い時期に」
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20231016-OYT1T50125/
せっかく児童保護に向けて一歩踏み出そうとすればすぐこれである。そのせいでこんな事件も起きる。
〈栃木・“制服姿”の女性死体遺棄〉逮捕された男は8年前に11歳少女を誘拐・強制わいせつ容疑で逮捕の前歴あり。中学では影の薄い“無キャ”、今年3月に「会社辞めちゃったんです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c145fb1d14c4000c5b2011265e6bf4dec2a0d35
現時点での容疑は死体遺棄だけなので性犯罪の再犯とは断定できないのだが、そうなる可能性が高そうに感じる。
日本版DBSとは、「子供と接する職業については性犯罪歴がないことを証明する」という仕組みである。
今回日本版DBSが頓挫した理由は3つあって、
(1)性犯罪歴の確認の義務化は学習塾などまで拡大すべし
(2)性犯罪歴を確認できる期間を長期に伸ばすべし
(3)不同意わいせつ罪などの前科に限定せず、条例違反や懲戒免職などの行政処分も対象にすべし
という3点について与党から意見がでたことによる。

出典:性犯罪法案、臨時国会提出を断念 日本版DBS、与党批判で(共同通信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f7dc34722bc8f6397ebb1e4a3b904a10303bd4db
どれも今の政府案よりも厳しいものにすべしという内容なのだが、なぜかそれで提出が見合わされてしまった。
犯罪歴データベースへのアクセスが容易になれば、(1)はそれほど難しいことではない。確認がとても難しければ、たとえば確認するためには公的資格が必要とかだと既得権者の保護になりかねないのだが、そうでないなら大きな問題ではない。学習塾、スイミングクラブ、音楽教室、バレエ教室、英会話教室など、拡大すべき施設はいっぱいある。ポイントはデータベースへのアクセスの容易さである。米国だと、誰でもネットで犯罪内容、住所、氏名、顔写真まで確認できる。今の政府案では犯罪歴の確認をDBS(ここでは仕組みではなく組織)に依頼し、DBSが裁判所や警察に照会、証明書を発行するというものだが、データベースを整備して一般公開してしまえば話がはやい。そこで犯罪者の人権とか言い出すから話が進まなくなる。
(2)は法律の組み立ての話なので憲法論ですらない。犯罪歴が消滅する理由は犯罪者の社会復帰を容易にするための政策的配慮でしかないので、児童の性的搾取を防止するという大義があれば、確認できる期間を長期化しても何ら問題はない。
(3)については前科に限定せずに当該施設への就業を禁止するのであれば憲法論の話になってくるのだが、確認だけを義務化して、採用するかしないかは当該施設の判断とすれば憲法との整合性も取れる。
要すれば、単に政策的判断なのに政府は及び腰ということである。根底にあるのは、「DBSはやりすぎ」という日本人特有の保守的思想だろう。
「弱者をきちんと保護しよう」という基本理念が欠如しているから、ジャニーズが忖度されるし、児童虐待が許容されるし、子供たちが性犯罪から守られないのである。