2004年10月12日

イスラームの常識がわかる小事典


イスラームの常識がわかる小事典いつまで経っても解決の糸口が見えないイラク問題。僕は宗教意識が希薄なので、「一体イスラムの人達は何をどう考えているのだろう」と思い、この本を読んでみた。

まず、作者が繰り返し説明しているのは、イスラム教が神話ではなく、事実をもとにして構築されている、という点。イスラム教の「コーラン」(クルアーン)は、預言者(予言者ではない)ムハンマドが神から与えられた言葉をまとめたものなのだそうだ。イスラム教には、コーランの他にハディースというものがあり、これはムハンマド自身のことばや行動を細かく記録したものとのこと。つまりは、ムハンマドに託された神の言葉に従い、預言者として選ばれたムハンマドの言動を手本にするのがイスラム教徒である。

イスラム教徒の禁止事項は偶像崇拝、殺人、飲酒、豚肉を食べること(ヒンズー教徒は牛を神聖な動物として食べることを禁じているが、イスラム教徒は豚を不浄な動物として食べることを禁じている)。では、なぜ9.11のようなテロが発生したのか、となるとこの本の著者自身も疑問に感じているし、イスラム教徒が主犯という点に対しても疑問を表明している。結局、イスラムを巻き込んでいる数々の紛争の原因については、この本を読んでも知ることができなかった。しかし、イスラム教の人がどういう人たちなのかはある程度理解できたと思う。

アメリカとイラク、イスラエルとパレスチナ、ちょっと前ならイラクとクウェートと、イスラム教を巡る紛争が絶えないため、どうもイスラム教に対して「理解できないもの」、さらに進んでは「恐ろしいもの」と考えている人も少なくないと思う。しかし、なんだかわからない、と漠然と考えている限りはイスラムへの理解は深まらない。イラク問題、イスラエル問題を理解するためにも、一度読んでおいて損はない本だと思う。

ただし、書きぶりはやや冗長で、正直、文体は僕の好みではない。内容に対して☆2つ半。

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