僕はほとんどの言葉を「名言」と思わないし、特に生きている人間の言葉なんぞ、と思うわけだが、先崎学氏(将棋の棋士)が以前エッセイで書いていた、「全ての女性は中島みゆきとそれ以外にわけることができる」(正確には覚えてないのだが(^^;)は間違いなく後世に残る名言であろう。
#後記。本を見つけてきました。いわく、「すべての音楽はみゆき様の歌とそれ以外に分れ、すべての女はみゆき様とそれ以外の女に分れるのである」(まわり将棋は技術だ)でした。
まわり将棋は技術だ 先崎学の浮いたり沈んだり2
ということで、久しぶりに発売された中島みゆきの新譜はセルフカバーアルバムである。さすがにこれだけ長いこと歌手をやっていると、セルフカバーする曲にも困らないだろう。
あぶな坂。「私の声が聞こえますか」でも最初の曲。元の曲はかなりボーカルが前面に出ていたが、こちらではかなり抑えた感じ。恐らく、このアルバムではこういうトーンで続くんだろうな。イントロのアコギが印象的な曲だったので、ギターが大分後ろに引っ込んだ出だしは「あらら?」って感じだった。高音パートは昔の中島みゆきを感じさせるのだが、低音は昔よりもずっと深みのある声になる。
わかれうた。いわずと知れた初期の大ヒット曲なので、大分聞きなれている。平井堅なみの息継ぎの激しさはないが、違和感が全然ない。しかし、この曲も出だしのギターの音が印象的な曲だったので、「おや?」って感じ。アコースティックギターはなしにしちゃったんだね。で、ブズーキを使っているらしい。あと、アコーディオンで古さというか場末感というか、そんな雰囲気を出しているのかな??
怜子。「愛していると云ってくれ」の、「元気ですか」の詩の朗読のあとに続いていた曲。元曲は一気に歌の世界に引き戻すための役割を持った曲で、単体よりもアルバムの構成上重要な曲だったと思う。結果としてパワーのある歌いだしだったが、今回は透明感のある録音。アレンジは昔の「歌姫」みたいな印象。バランスが良くて、今の声質もフィットしていて、うまく仕上がってると思う。「あたしの胸に痛すぎる」というのがあまり痛くなく感じられるのは、やはりそういう境地に至ったからか??それが「いまのきもち」?
信じ難いもの。この曲は元の曲の、若さが感じられるボーカルの方が個人的には好き。ちょっと、この曲を歌うには中島みゆきは大人になりすぎているといっては失礼(^^;???なんか、20代半ばの歌って印象が強いんだよなぁ、個人的に。
この空を飛べたら。これは加藤登紀子さんに提供したこともあり、カラオケとかで別のバージョンを聞いている。そのせいか、違うバージョンでも曲の雰囲気に対しては違和感がない。違和感はないが、「おかえりなさい」のアレンジが良いだけに、前の方が良いかも知れない。もうちょっと聞きなれたらこっちのが良くなるかな??やっぱり、「生きていてもいいですか」ぐらいまでのアルバムは、自分で散々ギターを弾いて歌った曲だから、当時前面に出ていたギターの音が控えめになる(この曲ではアコギの音は聞こえない)のがちょっとね。二番後半のさびの前で声色を変えて雰囲気を違うものにしているのは工夫しすぎ?
あわせ鏡。あの、奇跡的に完成されたアルバム、「臨月」(僕の中では「臨月」、佐野元春のSOMEDAY、坂本龍一の音楽図鑑、レベッカのREBECCA IVが邦楽完成度四天王。古くてすいません(^^;)から良く引っ張ってきたな、と思うが、アコースティックギターとアコースティックピアノ中心、間奏で入るトランペットなどの新しいアレンジも良い。この曲の前(この空を飛べたら)まではギターが控えめにまわっていたけど、この曲は逆にアコギが前面に出てきているのも面白い。だいたい、この曲はシャッフルストロークの曲で、こういう感じでアルペジオで弾くのって意外性が大きい。
歌姫。アレンジはいじっているが、歌い方などは元の曲に良く似ている印象。昔の方がもっと甘えた感じだったかな。最近の中島みゆきのセルフカバーは「ため」が一つの特徴で、この曲でもそれが見られるんだけど、それほど顕著じゃない。・・・と、聞きながら書いていたら、最後のさびの部分ではためまくってるな(^^;
傾斜。悪女の大ヒットのあとに発売された「寒水魚」で、悪女の直後に収録された曲である。今回のアレンジでは怜子と同様、エコーを深く効かせ、同時にエレキギターのアルペジオを加えて透明感を出している。後藤次利の冒険的なアレンジを中島らしくやりなおした感じ。随分と軽く、聞きやすくなった。ただ、さびの直前からの盛り上げ方はあんまり好きじゃない。そのままの調子でいったらどだったんだろう。ま、好みの問題だけどね。
横恋慕。船山基紀のアレンジだった曲を大幅に変更。ウッドベースではじまるイントロであっという間に昔のイメージを払拭している。アレンジだけでなく、歌い方もがらっと変わっている。元の曲はコミカルな印象があったが、その名残は間奏の鉄琴の音ぐらい。こっちの方が良いなぁ。このアレンジだったらこの曲もヒットしたと思うぞ。
この世にふたりだけ。予感の冒頭の曲だけど、このアルバムは全体的に重いアレンジで統一されていたので、この曲も当然重かった。今回のアレンジでもかなり重め。これは元の曲、中島みゆきが自分でアレンジしていたんだよね、確か。今回はそのアレンジをかなり踏襲している感じ。実際はやや軽くなっているけど、このアルバムが全体的に軽めなので、相対的に重さが目立つ。
はじめまして。アルバム「はじめまして」のラストの曲。アレンジは随分と変わっている。しかし、曲から受ける印象は不思議と大きく変わらない。歌い方のせいかなぁ。服だけちょっと着替えたって感じ。この曲はやはり「僕たちの将来」とセットになっていて欲しかった気もする。
青の濃すぎるTVの中では
まことしやかに暑い国の戦争が語られる
僕は 見知らぬ海の向こうの話よりも
この切れないステーキに腹を立てる(僕たちの将来)
今の日本は、20年前と何も変わってないなぁ。って、ちょっと話がそれた。
どこにいても。夜会の「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」の中の挿入歌。そして見返り美人のB面。なのだが、あまり聞き込んでいないので、ほとんどはじめて聞くような感じ。
土用波。なんでこの曲で終わるのか、個人的には良くわからないのだが、ま、いっか。この曲は椎名和夫のアレンジの方が好み。
あっという間に聞き終わっちゃった。各人それぞれに思いいれのある過去の曲。それを引っ張り出してきてアルバムに収録するのはなかなか勇気のいることだと思う。一番思いいれがあるのは中島みゆき自身だろうしねぇ。
何はともあれ、来年にあるツアーを楽しみにしています。慶応の学園祭で見て以来だものなぁ。せめて一年に一度はツアーをやってくれ!!!
#考えてみれば、「寂しき友へ」ツアーの神奈川県民ホールでコンサートを見たのが中学生とか、そのくらい。オールナイトニッポンの「私は知りたい」のコーナーではがきが読まれたのが中学3年生の冬だ。随分長い付き合いですね(^^
いまのきもち