2019年02月08日
百円の恋
新井浩文の件があっていつ観ることができなくなるかわからないので、慌てて観た。
安藤サクラは「愛のむきだし」からお気に入りの女優だが、本作は彼女の代表作となりそうな内容だった。
32歳の引きこもり女性が、家出をきっかけにアルバイトをはじめ、ボクシングにはまっていくという良くありそうなストーリーだが、脚本のできと監督の演出がうまい。おかげで安藤サクラの役者としての才能が上手に引き出されている。こういう作品に出会うことができた役者は幸せだと思う。もちろん、相応の苦労はあるはずで、この役を演じきるのは才能だけでは足りなかったのではないか。
ちょっとした会話や、コンビニに流れる音楽などで乾いた笑いを誘うのが良い。
今では「万引き家族」やNHKの朝ドラに出演したことによって、全国区の実力派俳優として認識されたと思うが、ブレイク直前の傑作と言っても良いだろう。評価は☆2つ半。
2014年の邦画ランキングを書き換えないとだな。この作品は2位。
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映画2014│
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2018年12月25日
6才のボクが、大人になるまで。
同じ俳優で、12年かけて撮影したあたりが「北の国から」の総集編を米国版にしたような映画。
親の離婚や再婚、初恋と失恋を経験して成長していく様子を淡々と描いている。主人公の役者がカッコ良くなっていくのが良い。ただ、ダイジェスト感は強く、短時間の映画にするにはちょっと無理がある感じ。
映画の評価はそこそこ高いみたいで、別につまらなくはないんだけれど、これなら、きっと倉本聰さんが脚本を書いて、膨大に存在するであろう「北の国から」の映像を120分か、150分の映画にした方が楽しめそうな気がする。問題は、その編集がそう簡単ではないということなんだが。
評価は☆1つ半。
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18:24
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映画2014│
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2015年08月22日
神さまの言うとおり
100円レンタルで鑑賞。
ちょっとの良作と多数の駄作を撮り続ける三池監督だが、本作は観る前からわかるような超駄作。俳優の演技力の問題もあるのだろうが、演出も酷い。こんな映画なら撮らないほうがマシだと思うのだが、それでも三池監督に撮らせてしまう強力な何かがあるのだろう。それが何なのかはちょっと外野からはわからない。
この映画が「ローグ・ネイション」を観るのにかかる費用と同じ金額だと思うと愕然とする。この映画には、100円ですらもったいない。
2015年07月21日
グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
レンタルBlu-rayで鑑賞。
モナコとフランスの関係が悪化した数年、グレース・ケリーがどう行動したのかを描いた作品。事実に基づいているとのことだが、演出のせいなのか、どうもストーリーに重みがない。ハリポタのスネイプみたいなキャラがいて、いかにもという感じの結末を迎えるあたりもちょっと観客を馬鹿にした感じ。
ただ、最後の演説はなかなか興味深かった。あと、ニコール・キッドマンの演技はなかなかだったと思う。
映画館で観たら後悔するところだったのだが、100円なのでまぁこんなものかな。腹が立つこともないし、時間を無駄にした感じもしない。あと1本借りると割引なんだけど、借りたいビデオがない、という時には良いかも知れない。評価は☆1つ半。
2015年07月20日
8月の家族たち
TSUTAYAの準新作100円にのせられてレンタル。
予備知識なしで鑑賞したんだけれど、なかなか面白かった。登場人物のほとんどの女性は口が悪く、仲が悪い。一方で男性たちはみんなおとなしくて、優しい。フェミニストが観たら激怒しそうな話なんだけれど、米国で作られた映画なので意外と文句は出ないのかも知れない。
冒頭、おじいさんの独白で始まるので、この人が狂言回しなのかな、と思ったら、あっという間に失踪して舞台上から退場してしまう(笑)。メリル・ストリープが演じているおばあさんがとにかく毒舌で、娘たちも毒舌、さらに、おばあさんのお母さんがまた酷い奴だったというネタまで出てきて、なんとも気分が悪くなる。この映画、家族が円満な人が観たら「えーーーー」という感じなのかも知れないけれど、僕は家族とは何年も話をしていないくらいに仲が悪いので、そうそう、と力強く頷いてしまう場面が少なくなかった。僕は大学生の時、苦労してさだまさしのコンサートチケットを手に入れて(当時のチケットぴあは公衆電話から延々と電話をかけ続けなくてはならず、本当に大変だった)母親にプレゼントしたところ「席が悪い」と文句を言われて、以後、彼女には一切のプレゼントをしなかったのだが、すると今度は「母の日にも何ももらえない」と他人に文句をいう。意地の悪い人間が家族に存在すると、本当に息苦しいものだ。そんな息苦しい家族の会話劇が延々と続いていくのだが、最初は気分が悪くても、途中からそれを通り越して笑ってしまう。その、徹底した演出が見事。よくもまぁ、ここまで嫌な家族を描いたな、と。
一服の清涼剤と思っていた登場人物にも隠された過去があったりして、最後まで一筋縄ではいかない。いやぁ、メリル・ストリープ出演と聞いて何気なく借りたけど、面白かった。でも、誰が観ても面白いわけではなく、むしろ不快に思う人のほうが多いかも知れない。特に若いカップルにはお勧めできない(笑)。
評価は☆2つ。
2015年03月12日
2014年 映画ランキング 邦画編
1位 WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜 ☆☆☆
演出や脚本にも嫌味がなく、仕上げも気持ち良い。そして、何よりも出色なのが「におい」を感じられる映画だということ。
2位 紙の月 ☆☆★
役者の演技は良かったが、演出と脚本が足を引っ張った。
3位 寄生獣 ☆☆★
面白かったけど、後編があるならあると最初にわかりやすく提示して欲しい。
4位 私の男 ☆☆★
原作のミステリー感が失われてしまったのは残念。
5位 土竜の唄 ☆☆★
漫画調で始まって非常に不安になるのだが、そこから先はノンストップ。途中で息切れを起こすのがいつものことになっているクドカンの脚本も、本作ではラストまで一気に駆け抜けている。
6位 舞妓はレディ ☆☆
インド映画風のミュージカルで楽しめる。
7位 青天の霹靂 ☆☆
ありがちなタイムスリップもので特にこれといったひねりはないのだが、普通に良い話に仕上がっている。
8位 海月姫 ☆★
褒めるところはたくさんあるが、残念なところも多い。
9位 思い出のマーニー ☆★
伏線の回収にあたり、丁寧に説明を繰り返す脚本が子供向け。
10位 ほとりの朔子 ☆★
方向で言えば、「めがね」のような作品で、大きな展開がないままに淡々と進んでいく。長回しを多用した撮影手法、灰色の空に灰色の海といった日本らしい海岸の描写、BGMを極力使わない演出、これらの全てが、少しずつ僕の好みからはズレていた。
11位 サンブンノイチ ☆★
脚本に意外性がなくて退屈するが、数名の役者の熱演で眠くなることはない。
12位 ジョバンニの島 ☆★
内容自体は教養として役立つので、テレビ放映の時に観ておくか、レンタルでの鑑賞を推奨。
13位 るろうに剣心 伝説の最期編 ☆★
過去2作よりはマシだが、監督の力量不足が響いて単調なでき。
14位 るろうに剣心 京都大火編 ☆★
浅草の場面をなぜか熊本で撮影している珍品。脚本が悪いので眠くなる。
15位 ジャッジ! ☆★
ヒロインがストーリーを引っ張り切ることができないので、物語には深みがない。
16位 家路 ☆
同じことを訴えるにももうちょっと違った表現手法があったはずで、その点でイマイチ評価できない。原発や放射能だけでなく、ボケや親子についての描写もあったけれど、どれもこれも消化不良でフォーカスがぼけてしまっていたことも残念。
17位 日々ロック ☆
二階堂ふみはさすがだが、監督の力量不足が目立つ。
18位 超高速!参勤交代 ☆
役者は普通に頑張っていたと思うし、演出も普通だし、ストーリーに嫌味なところもなく、これといって悪いところは見当たらないのだが、とにかく笑えない。
19位 バンクーバーの朝日 ★
監督、脚本以前にプロデューサーの腕が疑問。
20位 柘榴坂の仇討ち ★
ほとんど見どころがなく、広末涼子の大根役者っぷりを眺めるのが関の山。
21位 まほろ駅前狂騒曲 ★
それなりに豪華な役者陣だが、ストーリーの底が浅くて残念。
22位 ルパン三世 ★
意外と突っ込みどころがないのが逆に残念。
23位 トワイライト ささらさや ★
演出と脚本がダメなのでつまらない。本来なら☆ゼロだが、新垣結衣の可愛さにおまけ。
24位 渇き。 ★
中島哲也監督は「告白」(2010年)ぐらいからちょっと明後日の方向に行ってしまった感があり、常に新しいものを提示し続けている作家性は高く評価したいけれど、この作品は嫌い。
25位 息を殺して 無星
正直、何が面白いのかさっぱりわからなかった。
26位 小さいおうち 無星
「どうせ観客は馬鹿だから、ちゃんとわかりやすく説明してやらなくちゃ」という配慮なのかも知れないが、「次はどこそこの村に行け」「その次は城に行って王様に話を聞け」と、一々事細かに次にやることを指示してくれるロールプレイングゲームのようで、こういう映画を、『つまらない映画』という。
27位 MONSTERZ モンスターズ 無星
冒頭から超能力を使うと効果音がなるベタベタな演出で「あぁ、この映画はダメだな」と開始3分で気がつく。
28位 劇場版 零〜ゼロ〜 無星
ホラーなのに全く怖くないし、驚くこともないダメな映画
2014年 映画ランキング 洋画編
1位 インターステラー ☆☆☆
映画ファンなら、ぜひとも映画館で観ておきたい作品。
2位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ☆☆★
大人から子供まで楽しめる。続編を作る気満々。
3位 ジャージー・ボーイズ ☆☆★
イーストウッドらしさは薄口だが、批判らしい批判が出てこない映画。
4位 ストックホルムでワルツを ☆☆★
実話の持つパワーが凄い。
5位 アバウト・タイム ☆☆★
せっかくの特殊能力を意外と小さな幸福のために利用するところが良い。
6位 ウォルト・ディズニーの約束 ☆☆★
びっくりするような仕掛けがあるわけでもなく、子どもでも楽しめるような作りになっているけれど、しみじみと良い映画だと思う。
7位 マダム・マロリーと魔法のスパイス ☆☆★
全然主役級の活躍をしないマロリーがタイトルになってしまうのが謎だが、映画としては面白い。
8位 ゴーン・ガール ☆☆★
後半、キチガイたちが大活躍する。
9位 フューリー ☆☆★
戦争の現実を生々しく表現。戦勝国でこういう映画が撮られたことは興味深い。
10位 RUSH ラッシュ/プライドと友情 ☆☆★
スポーツの世界でライバルたちと戦った経験がない人がどう感じるのかは分からないが、そういう世界にいたことがある人間の一人としては、最後まで飽きない内容になっていた。
11位 ジゴロ・イン・ニューヨーク ☆☆
軽い笑いに終始していて、観終わったあとの印象も良い。デートに最適。
12位 ベイマックス ☆☆
単純に楽しめるので、肩肘張らずに鑑賞すれば良い。
13位 ウルフ・オブ・ウォールストリート ☆☆
余計なうんちくを盛り込んだり、お説教のような教訓話にせず、お祭を描くことに徹しているのが良かった。
14位 アナと雪の女王 ☆☆
ストーリーはストレート、演出はダイレクト。PIXARが時々見せる(例えばモンスターズ・インクのラストシーン)奥ゆかしさが全くない。子供向けには良くできていると思う。
15位 アメリカン・ハッスル ☆☆
言葉、風俗、音楽、下敷きになっているアブスキャム事件など、米国人じゃないと理解が難しい要素がてんこ盛りなので、米国人が「三丁目の夕日」を楽しめないのと同じように、日本人がこの映画を心の底から楽しむのは難しいと思う。
16位 悪童日記 ☆☆
内容が文学的で、映画には馴染まない印象。本で読んだほうが楽しめそう。
17位 バルフィ! 人生に唄えば ☆☆
長いので途中で眠くなるが、ラストまで頑張ればスッキリする。
18位 グランド・ブダペスト・ホテル ☆☆
演出やコネタは楽しいが、ストーリーが散漫だったのが残念。
19位 her ☆☆
脚本と設定が面白いのだが、最後の仕上げが下手くそだった。
20位 X-MEN:フューチャー&パスト ☆☆
旧作との整合性がとれなくなってしまったが、それを気にしないのであれば楽しめる。
21位 記憶探偵と鍵のかかった少女 ☆★
設定は秀逸だが、ストーリーは陳腐。
22位 猿の惑星:新世紀(ライジング) ☆★
さらなる続編が前提なので、食べ足りない部分はある。
23位 GODZILLA ゴジラ ☆★
エメリッヒ版よりは面白かったけれど、すげぇ面白いかと言えば、そんなこともない。
24位 オール・ユー・ニード・イズ・キル ☆★
タイムスリップの定義がかなりいい加減でご都合主義なので、映画に入り込みにくいのだが、ラストシーンは良い。
25位 複製された男 ☆★
一度観ただけでは解釈が難しいのだが、二度観たら寝ちゃいそうな困った作品。
26位 はじまりは5つ星ホテルから ☆★
男性とか、専業主婦の女性が観てもあまりピンと来ないかも知れないが、仕事に生きている女性が観たら色々と共感するところがあるのではないかと思う。
27位 ぼくを探して ☆★
小品だとは思っていたが、予想以上に小品だった。
28位 ローン・サバイバー ☆★
戦争映画が好きなら楽しめそう。山岳地帯を舞台にした大量のタリバーンと4名の精鋭の戦闘シーンは迫力満点である。
29位 ラストミッション ☆★
眠くなるほどつまらないわけではないけれど、この映画に1,800円出すのはどうなの?という感じ。
30位 キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー ☆★
カッコイイ主人公が大活躍、という内容なので、特に文句はないのだけれど、大味な展開に終始している。
31位 サボタージュ ☆
正義対悪の対決というよりも暴力対暴力という構図。最終的にわりを食うのが弱者ばかりで不快な気分になる。
32位 ブルージャスミン ☆
どうしてそこで終わっちゃうの?という終わり方で、ちょっとストレス。
33位 パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト ☆
バイオリンの演奏は凄い。録音も良い。コンサートだと思えば十分満足なのだが、残念だけど、これ、映画なのよね。
34位 マイティ・ソー/ダーク・ワールド ☆
前作よりも明らかにパワーダウン。
35位 トランセンデンス ☆
観るべきものはほとんどないダメ映画。
36位 プロミスト・ランド ☆
ごくごく当たり前の内容なので、映画館で観るほどのこともない。
37位 アメイジング・スパイダーマン2 ★
まるでミュージカルのように音楽がなりっぱなし。この音が個人的にはあまり好きになれなかったので、映画にも乗りきれなかった。
38位 キック・アス/ジャスティス・フォーエバー ★
結局、続編に着手するまでに2年間を要したという時点で、失敗は決まっていたのだと思う。
39位 リベンジ・マッチ ★
何やら、加齢臭がしてきそうな映画。
40位 マレフィセント ★
完全に子供向けなので、大人の鑑賞には堪えない。子供を連れて行く場合は眠気対策必須。
41位 ワールド・エンド ★
映画オタクだと楽しめるのかも知れないが、普通の映画ファンだと、映画の暴走っぷりについていけなくなる。
42位 ルーシー 無星
驚きに溢れた珍作。でも、ラズベリー賞ではノミネートさえされず。
43位 トランスフォーマー ロストエイジ 無星
当たり外れの差が大きいシリーズだが、間違いなく大ハズレ。
44位 ダイバージェント 無星
何か残るものがあるわけでもなく、爽快感もなく、では突っ込みどころ満載かといえばそんなこともない、普通にダメな映画。
2015年01月24日
ベイマックス
原題「BIG HERO 6」がなぜベイマックスというタイトルになったのか、さっぱりわからない。
BIG HERO 6というタイトルそのまま、オタク大学生たちを中心とした6人が、サンフランシスコと東京を足して3で割ったような街を舞台に活躍するアニメである。ストーリーはアニメっぽく他愛のないものだが、単純に楽しめる。映像表現的にもそれほど新しいものがなく、肩肘張らずにリラックスして楽しめば良いんだと思う。ちょっとどうかと思ったのは米国の映画らしく、音楽主導でどんどん引っ張っていくところ。アニメといえば一昔前までは日本のお家芸だったので、その時代に育った人間にはちょっと違和感がある。とはいえ、今やディズニー、ピクサーがアニメの第一人者なので、こういう表現が一番主流なのだろう。
でも、ずっと音楽が鳴りっぱなしでメリハリがないので、眠くなっちゃうんだよね。
評価は☆2つ。
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2015年01月16日
ストックホルムでワルツを
ちょっと前だと『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(Walk the Line)、最近だと『ジャージー・ボーイズ』(Jersey Boys)と、ミュージシャンの半生を描いた伝記映画には傑作が多い気がするのだが、この作品はスウェーデンのジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの半生を描いている。
スウェーデンの田舎町に住むシングル・マザーが才能のある男たちを踏み台にしつつのし上がっていく姿を生々しく表現しているのだけれど、表面上の華やかさの一方で、お決まりのアルコール中毒や、音楽で挫折を味わった父親との確執など、裏では散々苦しんでいる姿が息苦しさを感じさせる。そうした様々な苦難の末にどうなるのかは自分の目で確かめて欲しい。びっくりするような演出や脚本ではないのだけれど、やはり実話の持つパワーが凄いので、最後まで全く飽きさせない。また、主役女優エッダ・マグナソンの歌や演技が魅力的なのも大きい。
酒にタバコに男に、と、荒れまくりの人生なんだけれど、そういう時代だったんだろう。
劇中では英語とスウェーデン語が使われているのだけれど、英語の字幕は<>付きで表現されていて親切だった。
原題は「MONICA Z」だが、このZはゾンビのZではない。
あまり大規模に上映している感じではないのだが、今でもやっているところがあるので、近所でやっていたら観ても損ではない。というか、これを観ないことの方が損だと思う。評価は☆2つ半。
2015年01月11日
3分でわかるホビット前2作
ホビットの三作目を観るにあたり、前2作の内容をすっかり忘れているので、「3分でわかる!」というチラシ(公式)を読んでみた。
これまでの冒険のポイントは、臆病で平凡なホビット族のビルボが、竜に奪われたドワーフの王国と財宝を取り戻すために仲間と一緒に旅に出たこと。他の主な登場キャラクターは、魔法使いのガンダルフと、13人のドワーフ、森のエルフたち。これだけ押さえておけば大丈夫。
だそうで、3分どころか、30秒である。前2作の立場が全くない。
2015年01月10日
ゴーン・ガール
頭のネジがはずれちゃってる人が数人と、それに引っ掻き回される一般人がたくさん出てくる映画である。ネジのはずれ具合が凄いので、死人まで出るありさまである。結婚をシニカルに描いているので、カップルで観に行くのはお勧めできない。少子化に悩んでいる国の皆さんにもあまりお勧めできない。とはいえ、映画としては非常に良くできている。
長い映画だが、まだ半分くらいでしょ?というあたりでとりあえずひと通りの種明かしがされてしまう。そして、そこからはキチガイたちが大活躍する第二部のスタートである。ここからの展開が全く予想できず、観るのに疲れてきそうな観客をぐいぐいと牽引していく。一流の監督が撮ると、こうも凄い映画ができあがってしまうものなのかと感心させられる。
ベン・アフレックも良い演技をしているが、それ以上に妻役のロザムンド・パイクの演技が凄い。監督の演出要求を完璧にこなしているのではないか。
中盤で一度ネタばらしがあるとはいえ、スリラー調の映画なので、あまり多くを書くことができないのだが、メインのストーリーについては時々表示される日付さえ覚えておけば、混乱することはない。種明かしも親切に行われていくので、難解な部分も少なく、安心して観ることができる。字幕が松浦美奈氏なので、訳も安心。「うわ、やっべぇー。こいつ、真性だよ・・・・」という思いをしたければ、映画館へどうぞ。グロい味付けは少なめでも、十分に嫌な気分を味わうことができるはず。
評価は☆2つ半。
2015年01月09日
バンクーバーの朝日
戦前、バンクーバーに移住した日本人によって結成された野球チーム「朝日」が、現地での差別など劣悪な環境にもめげずに地元野球チームたちと戦った実話をもとにした作品。
と書くととても面白そうなのだが、実際はそうでもない。まず、脚本がイマイチ。長ったらしい独白で状況説明を始める映画にまともな作品はほとんどないのだが、これもその一つ。次にダメなのが演出。肝心要となるはずの野球シーンが極端なアップか、誰がいるのかわからないくらいに引いた画面ばかり。そこそこ野球ができる役者を揃えた形跡はあるものの、主役である妻夫木聡がド素人なので、こういった演出にならざるを得なかったのかも知れない。
序盤、野球シーン以外の退屈な場面が延々と続き、さあ、いよいよ、と思ったらそこから先は妙に淡白。挙句、クライマックスで終わったかと思ったところからまた蛇足のように中途半端なストーリーが展開していく。
役者はまぁまぁだったと思うのだが、「この役者は歌が歌えるんだから、歌わせないと損」みたいな、小学生の学芸会みたいな役者の使い方にはちょっと呆れてしまった。おそらく、監督や脚本家以前に、プロデューサーが悪いのだろう。
セット感丸出しの町並みや、合成しました!という絵作りもなんだかなぁ、という感じで、いくら野球が大好きな日本人でも、映画館まで足を運ばせるのは難しいできである。ストーリーは興味深いものだっただけに、色々ともったいない感じだった。評価は☆半分。
2014年12月31日
海月姫
典型的なコミックムービーで、好き嫌いがはっきりしそうな演出である。最近はこういう演出の作品がいくつもあるので、観る方の抵抗感はそれほどでもなくなってきていると思うのだが、この作品は演出以前に、脚本が雑すぎる。時間的にどう考えても無理なことをさらっと表現して知らんぷり、みたいなことが多いし、重要なキャラなのかと思ったら途中ですっかり姿を消してしまう人物がいたりする。クラゲ服のデザインもイマイチ。ファッションショーは照明や音楽とか大事なのに、誰がやってんだ?という話になる。観終わった"直後"の印象が非常に良い作品なのに、あとで「あそこが」「ここが」と気になり始めるのがもったいない。
役者で見ると、ノーメイクのくらげオタク役の能年玲奈は、普段はメイクしてないような化粧をしていて、気合いを入れると綾瀬はるかのようなメイクになるという、妙なキャラだったのだが、後者の場面は確かに可愛かった。菅田将暉もこれまた朝ドラのごちそうさんで野球少年をやっていた役者だが、なかなか良い女装っぷりだった。30代前半の女優としては非常に良い演技派だと思っている池脇千鶴は「無駄遣い!」と言いたくなる空気っぷりだったが、それはそれで見事だった。
褒めるところは色々とあると思うのだが、残念なところもたくさんある。ということで、評価は☆1つ半。
2014年12月11日
フューリー
第二次世界大戦末期のドイツにおける米軍戦車部隊の活躍を描いた作品、と書くと、あぁ、またか、という感じなのだが、この映画が新しいところは、米軍を美化しすぎていないこと。もちろん基本的には「英雄」として描かれているのだけれど、同時に「ヒーローがこんなことをやっちゃって良いの?」と思うような行動を取るので、観ている方は「やはり、戦争は悲惨なものだ」という認識を新たにする。敗戦国である日本ではそれほど珍しくない描写だと思うのだが、戦勝国である米国でこういう映画が撮られたことはなかなか興味深い。
大戦末期ということもあって、両軍とも兵士が不足しており、米国は数週間の訓練を施しただけの事務職員を戦車の乗員として派兵する。戦争の素人を戦場のど真ん中に配置することによって、観る人間を同じように戦場に引きずり込む。対するドイツも女性や子供を兵隊として採用していて、ちょっとでも隙を見せればやられてしまう。こうした緊張感の中で、迫力のある戦闘を描いているので観ていて飽きることはない。
上層部の出す無理難題に応えつつ、部下の命を背負って奮闘する中間管理職をブラピが好演している。他にも、戦闘で疲弊した兵隊たちを脇役たちも見事に演じている。ただ、色々かわいそうな場面が出てくるので、戦争映画が苦手な人にはお勧めできない。逆に、戦車が大好き、みたいな層には面白いのかも知れない。
松浦美奈さんの字幕なので、違和感なく観ることができる。
評価は☆2つ半。
2014年12月01日
寄生獣
原作未読。正確には、最初だけ知っていた。
さて、映画だが、どこかからやってきた寄生獣に右手を食べられてしまい、寄生獣と一緒に生活していかなくてはならなくなった高校生が主人公。寄生獣は「自分の命さえ守られれば、あとはどうなっても良い」という、非常に合理的な生物で、時として不合理な人間の意思決定と齟齬が生じていく様を描いている。
と、おおまかに説明したけれど、これがなかなか面白く撮れていた。1つ目の評価ポイントは特撮で、寄生獣に右手を乗っ取られた状態を上手に表現していた。だが、最大のポイントはそこではなく、寄生獣に乗っ取られた人々を演じる役者たちの演技力だ。思うようにならない右手を表現する染谷将太、人間を観察することに興味をもつ女性を演じる深津絵里、笑顔の作り方が下手な東出昌大・・・どれもこれもがなかなか良い演技をしていて違和感がない。3つ目のポイントは脚本で、最近観た邦画の中ではかなり良い出来だったと思う。脚本はリーガル・ハイの古沢良太と山崎貴監督の共同脚本で、先日放送されたリーガル・ハイの特番がイマイチだったことから心配していたのだが、良い方向へ裏切られた。
ちょっと「あれ?」と思ったのは、母親が警官と出くわすのがあまりにもご都合主義だったこと、母親の記憶が残っていたこと、ピアスが赤身肉から出てきたことなど。ただ、そういったクエスチョンマークをふっ飛ばしてしまうくらいの楽しさがあった。
「これで、どうやって風呂敷をたたむんだろう?」と心配になったところで映画は終了。なんと、後編があるらしい。そんなこととは知らずに観てしまった。大事なことだから先に教えて欲しい。
評価は☆2つ半。
2014年11月28日
日々ロック
二階堂ふみ出演ということで観てきた。途中で「桜の森の満開の下」以来大好きな毬谷友子さんまでが出てきてちょっと得した気分。
が、映画の出来はイマイチ。過剰な演出はコミックムービーとしてありだと思うのだが、主人公が腰が曲がったおじいさんみたいになるとか、日本語が喋れなくなるとか、意味不明なところがいくつかある。これがちょっとしたところならともかく、映画の重要なところで展開されるので興ざめする。他にも、撮り方が下手なために「こんなことする奴いねぇよ」と感じさせてしまったり、監督の力量不足が非常に目につく。普通に良い映画ばかりを観ているとアタリマエのことになって気が付かないのだが、下手な監督が撮った画面を観ると、あぁ、こういうのが技術のある・なしなんだな、と気付かされる。
また、音楽劇では当然音楽が重要になると思うのだが、大ファンの僕が観ても、二階堂ふみの「雨上がりの夜空に」の歌唱はいただけない。作品の中で彼女の持ち歌に設定されていた曲はテクノっぽいアレンジで、歌も加工されていたので全く気にならなかったのだが、誰でも知っている名曲を歌わせてしまうには、ちょっと歌唱力が足りなすぎた感じである。もしかしたら「下手なくせに中田ヤスタカ風の加工でヒットしている」という設定なのかも知れないけれど、それならもうちょっと説得力のあるシーンを加えて欲しい。そうでなければ、「二階堂ふみって演技は凄いけれど、歌はイマイチだね」と思われてしまう。
ストーリーも大映ドラマのようなベタな展開で、なんだかなぁ、という感じ。
原作未読なので、もしかしたら原作に忠実に作ったらこうなった(ヒロインの歌が下手なのも、主人公がずっと腰が曲がっているのも)、ということなのかも知れないけれど、それならもうちょっと映画向きに演出したほうが良かったと思う。
とはいえ、二階堂ふみの演技はさすがだったし、可愛かった。それだけは評価できる。鯵が干物になったり、感電したり、思わず笑ってしまうシーンもいくつかあった。と、頑張って前向きに考えてみたけれど、評価は☆1つ。
2014年11月26日
インターステラー
過去にも似たようなSF小説や映画はあったと思うのだけれど、上手に家族のつながりを加味したところが新しい。その意味では「漂流教室」(漫画)など、同じテーストを持つ作品がなくはないのだが、今の世の中、完全無欠なオリジナルはパクリか、パクリではないかに関わらず無理なので、それを難点として指摘するのは正しくないだろう。
生存し続けるのが困難になりつつある地球を舞台に、新しい惑星を探しにでかける父と、地球に残された娘が描かれる。人類の存亡を左右するのは「2001」で描かれたような超越的な「意思」で、物語は後半に向かって複雑な様相を呈していく。
難しい理論や、解釈が難しいストーリーが展開されるのだが、それらがクリアにならなくてもちゃんと伝わるものがある。その上で、より深い理解のために想像力を働かせたり、勉強したり、したくなる。新しい映像やストーリーだけでも十分楽しめるのだが、さらにもう一歩という要素があるところが凄い。好き、嫌いはあるだろうが、映画ファンなら絶対に映画館で観ておく必要がある作品だと思う。
評価は、☆3つ。
2014年11月22日
息を殺して
川越スカラ座で鑑賞。上映に先立ち、監督の挨拶があって、その内容はこんな感じ。
この作品は学校(芸大)の卒業制作で撮ったものである。制作にあたって、「どういうものが撮れるか」を考えたが、普通なら予算の制約があるところ、お金はそこそこ学校からもらえたので、撮りたいものを撮ることができた。
映画には犬が出てくる。私は出身が静岡の田舎だが、そのとき犬を飼っていた。Googleのストリートビューのサービスが始まる2年前に飼い犬が死んだのだが、死んだはずの犬が、ストリートビューには写っていた。今はもう存在していない犬が、ストリートビューを通じた世界では存在しているという不思議な感覚がこの作品を制作したモチベーションである。
スカラ座で上映できるのが、映画とリンクしていて面白いと思う。
さて、本編。イマドキの若者たちの二日間を淡々と描いている。イベントらしいイベントはイヌが迷いこむことと、幽霊がふらふらするぐらい。あとはほとんど何の変哲もない日常である。それを通じて、監督が何を伝えたかったのか。正直に言って、何も伝わってこなかった(笑)。「映画の良さが理解できないとは、馬鹿者だ」と思われてしまうことを承知で書くけれど、あーーー、つまらない映画だったなぁ、というのがストレートな感想だった。
監督が言うところの、すでに存在しない犬がストリートビューでは存在することの不思議さや、スカラ座とのリンクや、何もかもが理解不能。一体、何を観て、何を感じれば良かったのだろう?評価は☆ゼロ。
マダム・マロリーと魔法のスパイス
また出た、「◯◯と××の△△」タイトルである。バカの一つ覚えというに相応しいのだが、この作品のタイトルが最悪なのは、全く内容を表していない点である。マダム・マロリーは確かに重要な役ではあるけれど、映画の中ではナンバー3、4あたりの位置づけだ。それに、魔法のスパイスなんていうのも全く重要な役を果たしていない。確かに登場こそするものの、スパイスはタイトルにするほどのものではない。また、このタイトルでは魔法のスパイスとマロリーが関係ありそうに聞こえるが、両者は全く関係がない。この手法が許されるなら、「るろうに剣心」は「女医・高荷と京都の火事」になってしまう。そのくらいに的はずれなタイトルである。馬鹿なの?
しかし、この邦題の馬鹿さ加減とは反比例して、内容はなかなかのものである。インドからロンドンを経由して南フランスの田舎町にやってきた料理屋ファミリーが、道を挟んで営業しているミシュラン・レストランと敵対する、というグルメ対決もの。そこに、いい具合にフランス魂を盛り込んだりする。店の店主同士は敵対しているけれど、シェフは交流があったりする。やがて二つの文化が融合して新しい価値が生み出されていく様を爽やかに描いている。人間の嫌な部分もそこそこに盛り込んではいたけれど、最後まで安心して観ていられるのが良い。これは、時々登場する脇役の町長が良い役割を演じていたからかも知れない。
ところでちょっと前にも分子料理が登場したけれど、分子料理って、今も流行っているんだろうか?マンダリンにモラキュラーバーがあったと思うので、今度行ってみようかな?
評価は☆2つ半。デートで観て、お腹が減ったところで食事へ、というのがオススメ。
2014年11月18日
紙の月
ミステリー調かと思ったら、一人の主婦が若い愛人に溺れて、銀行の金を横領し泥沼にはまっていく様子をストレートに描いた作品だった。もうちょっと展開に捻りが欲しかったところだ。
しかし、主演の宮沢りえの快演によって、作品は非常に出来が良いものになった。宮沢りえはしばらくの間、舞台で観ることが多かったのだが、2006年野田地図の「ロープ」で完全に一皮むけて、以後、日本を代表する女優になったと思う。
参考:野田地図「ロープ」
buu.blog.jp/archives/50290620.html
ただ、手放しで褒めることができるかといえば、そうでもない。特に気になったのは効果音や音楽の使い方で、起伏を付けたい場面に音でアクセントをつけようと狙っていたのだが、これがちょっとあざとすぎる印象だった。穿った見方かも知れないが、宮沢りえの存在感に対向するために、監督が不必要な演出を施して自己主張した、と感じてしまった。
トータルで評価してみて惜しいのは、脚本がストレートすぎて解釈に幅がないこと。登場人物たちの心象が丁寧すぎるくらいに描かれてしまって、一度観るのには興味深いのだが、何度も繰り返し観たくなるような懐の深さが感じられない。また、主人公の心の動きが誰にでも起こりうることのように描かれているのならそれはそれで普遍性が生まれたのだが、この作品では、主人公の特殊性までをも丁寧に描き切ってしまった。結果として、エンターテイメントとしては良くできているのだが、語り継がれるような名作にはならなかったと思う。
宮沢りえや他の出演者の演技は良かったのだが、演出と脚本が足を引っ張ってしまった。評価はそれでも☆2つ半。
2014年11月14日
記憶探偵と鍵のかかった少女
MINDSCAPE、あるいはANNAという原題がなぜかアニメで良く見かける「◯◯と△△の□□」というタイトルになってしまっていたが、映画自体はそんなハートウォーミングな感じではなく、特にオープニングはホラーテイストである。全編から受ける印象は「エンジェルハート」みたいで、一体どうなっているんだろう、という感じのままきちんとラストまで引っ張っていく。
この映画の最大の成功点は「記憶探偵」という、人の記憶に踏み込むことができる超能力者を設定したこと。このおかげで、興味は最後まで続く。ところが、残念なのはストーリーである。折角設定が秀逸なのに、ストーリーが陳腐なのだ。一応形ばかりのどんでん返しはあるのだが、ハッピーエンドにしても、アンハッピーエンドにしても、もうちょっとスッキリする終わり方ができなかったのだろうか。
登場人物たちはそれなりにキャラが立っているし、いかにも続編を作りたさそうな終わり方だったのだが、このストーリーで果たして客が呼べたのかどうか。
評価は☆1つ半。
(これは、本ブログ通算9991のエントリーです)
2014年11月11日
まほろ駅前狂騒曲
大学生まで良く遊んだ町田を「まほろ」に見立てた作品なので、テレビドラマは全部観ていた。しかし、テレビではなかなか面白いこのシリーズだが、映画にするといただけない。そもそも、映画にするほどのストーリーではない。深夜にテレビで観て、くすくす笑って、あ、もう終わり?といった程度の内容なのだ。全く面白くないわけではなく、随所に笑ってしまう場面が盛り込まれてはいる。しかし、メインの流れがつまらない。オチも弱い。
脚本がダメで失敗する映画はたくさんあるのだが、この作品では、脚本はそこそこ健闘している。ダメなのは、原作である。とはいえ、「原作がつまらん」とは言い切れない。向き、不向きがあるわけで、この作品の場合、少なくとも映画には向いていない原作だったのだろう。サザエさんで2時間持ちますか?ということだ。
あちこちに実力派俳優をちょい役で配して、それなりに豪華なメンバーなのだけれど、非常に残念な作品である。評価は☆半分。
2014年10月30日
サボタージュ
試写会で鑑賞。
すっかり年をとって、体も太くなり、もうターミネーターは絶対にできないなぁ、という感じのシュワルツェネッガーの最新作である。シュワちゃんの役どころは麻薬取締局特殊部隊のリーダー。この特殊部隊は麻薬カルテルを相手にドンパチやらかす精鋭揃いなのだが、その隊員がひとり、またひとりと殺されていく、という内容。
細かいカットの連続で何が起きているのかさっぱりわからない、というのが最近のアクション映画の流行だけど、この映画はそういうインチキを抑えてしっかりと描いている。が、同時にグロいシーンもしっかりと描いていて、観る人を選ぶ仕上がりになっている。
犯人探しのサスペンステイストも適度にあるのだが、サスペンス目当てで観るとちょっと簡単すぎる謎解きにがっかりするかもしれない。一方で、ライトなアクションファン、ライトなサスペンスファン、ライトなグロファン(笑)なら、普通に楽しめると思う。個人的には、アクション、サスペンス、グロはそれなりだったと思う。
むしろ、残念なのは脚本。真犯人の動機が甘く、行動の必然性が感じられない。また、最後のシークエンスも、わからないではないけれど、もっと違う仕上げ方もあったと思う。最初から最後まで不快感がつきまとい、後味も良くない。正義対悪というよりは暴力対暴力といった映画で、最終的に割りを食うのは弱者ばかり。それが現実とはいえ、わざわざ映画館まで出かけて行って不快な思いをするのだから、鑑賞にあたっては相応の覚悟が必要とされる。
評価は☆1つ。
2014年10月22日
トワイライト ささらさや
試写会で鑑賞。死んだはずの人間が死にきれずに現世に色々と干渉する、という、タイムマシンものと並んで映画にはよくあるストーリー。だが、脚本と演出次第では面白くなるのも事実。大泉洋の作品はときどき拾い物があったりするので侮れない、と思いつつ、それなりに楽しみにして観に行ったのだが、結論から言えば大ハズレ。深川栄洋監督は過去作も微妙な作品(洋菓子店コアンドルもイマイチだったし、白夜行も監督の腕で駄目にした感あり)が少なくないのだが、中には「半分の月がのぼる空」のように、意外といけている作品もある。ただ、その作品は脚本が西田征史。一方でこちらは監督と山室有紀子の協同脚本で、山室有紀子といえば、最近では「武士の献立」で、良い素材をつまらなく調理した張本人である。
現世に残した妻子に気遣って、色々な人間に憑依する、という設定なのだが、登場人物たちの心象描写がほとんどなく、「こいつ、何のために出てきたの?」と疑問に思ってしまうことが度々ある。また、たった一度の経験で、「俺はこれこれこうなってしまったんだ」と分析し、結論を出してしまうあたりも唐突。俺は憑依できる、もう憑依できない、もろもろ、すぐに結論が出てしまうあたりがご都合主義丸出しである。他にも、物語の重要な場面での石橋凌の行動に説明がつかず、何だかなぁ、という感じになる。それもこれも、脚本が稚拙すぎるせいだ。新垣結衣の可愛さと、大泉洋のコミカルな語り口におんぶにだっこ、なのだ。
加えて、演出面でも噴飯モノのシーンがある。死亡診断をする場面で、瞳孔をチェックする際に、役者が生きているために(あたりまえだけど)、目を広げたら白目を剥いているのである。死んでいたら白目になるわけがないし、ましてや、白目では瞳孔をチェックすることができない。バカだね〜、という感じである。監督は、この程度の医療知識も持ち合わせていないのだろう。お金を払って、形ばかりのお医者さんごっこを見せられてはたまったものではない。
では、全く観る価値がないかといえば、そんなこともない。古手川祐子、和久井映見といった卵顔が好きな僕には、新垣結衣がたっぷり鑑賞できたことは評価できる。また、大泉洋に憑依された人たちの演出は、中村蒼以外についてはなかなか見事だった。また、遊眠社時代から山下容莉枝を応援している人間としては、白夜行に続いて彼女を使ってくれたことを嬉しく思う。と、頑張って見どころを探せば、見つからないこともない。新垣結衣が嫌いなら処置なしだけど。
ところどころ、漫才のような笑いを誘う場面はあったものの、メインの流れが悪すぎて、全く楽しめない。原作を読んでないので脚本だけのせいとは言い切れないが、少なくとも演出と脚本は全くいただけないし、そのせいでつまらない映画になっている。評価は☆ゼロのところ、新垣結衣におまけして☆半分。
2014年10月19日
悪童日記
原作は日記形式なんだろうが、映画では日記らしさが希薄だった。その上で、普通に楽しめたのだが、物凄い傑作という感じでもなかった。達者な子役を使って撮れば、このくらいはできるだろう、という想定の範囲内感が強い。
終戦間近のハンガリーを舞台に、常に死と隣合わせの状態においてたくましく生きていく双子の兄弟の姿を描いている。彼らは自他問わず「弱さ」に敏感で、それを克服することに執着する。彼らを導く存在が不在で、彼らは彼らなりの正義を目指していく。その様が、現代の価値観、日本人の価値観からは遠くはなれているために、かなり異様な様子が展開されていく。彼らを取り巻く登場人物たちは一癖も二癖もある人物ばかりで、様々なエピソードは心の奥底の微妙な部分を刺激し続ける。
が、内容があまりにも文学的で、映画には馴染まない印象を受ける。また、原題は「偉大な帳面」、英語題は「notebook」なのに、邦題が悪童日記になってしまうあたりにも違和感がある(原作の題名と同じなんだろうが)。原作未読で鑑賞して、原作を読んでみたくなる作品はときどきあるのだが、この映画もそんな一本である。多分、文章で読んだほうが楽しめると想像する。
評価は☆2つ。
るろうに剣心 伝説の最期編
過去2作に比較すると、できは良かったと思う。アクションは一層充実していて、殺陣のシーンは引き込まれる。ただ、単調。必殺技や奥義がどんなものなのか、良くわからないから困る。リングにかけろの「ギャラクティカ・マグナム」なども、パンチを放っている人間のコメントがなければ普通のパンチと何が違うのか良くわからなかったものだが(いや、ギャラクティカ・ファントムとは右パンチ、左パンチの違いがあるぐらいはわかったのだが)、この映画も同じである。そこをきちんと表現できないのでは、映画化しても価値が激減してしまうと思うのだが、論理的な説明は全く行われず、何が何だかわからなかった。
役者は過去2作同様、それなりに頑張っていたと思うのだが、やはり監督の演出力と脚本力がそれに伴わなかった印象だ。
また、絵作りにスケール感が感じられないのも惜しい。政府と反政府勢力の一大決戦のはずなのに、お台場で30人ぐらいがドンパチやっているようなショボさ。明治の頭であっても日本の人口は三千万人ぐらいはいたはずで、もうちょっと賑やかだったと想像するのだが。
レイトショウで観たのだが、客は僕以外に2組のカップルの合計5人。終映後、誰も席を立たないのでみんな熱心な映画ファンなんだな、と思っていたのだが、明るくなったら、2組のカップル共に、彼氏の方が熟睡中だった。これが映画の質を的確に示していると思う。評価は☆1つ半。
2014年10月11日
るろうに剣心 京都大火編
るろうに剣心の実写版第二作である。1,800円を出すのは嫌だし、すぐにストーリーを忘れてしまうと思うので、この時期になってようやく1,000円で鑑賞。
るろうに剣心第一作の評価はこちら
るろうに剣心(監督へのインタビュー付き)
http://buu.blog.jp/archives/51349040.html
さて、第二作。冒頭で
山鹿の八千代座のシーンがあって「なぜ熊本へ?」と思っていたらテロップで「浅草」とでてずっこけた。東京タワーを映しておいて「通天閣」とテロップを出してしまうとか、富士山を映しておいて「阿蘇山」とテロップを出してしまうとか、片山さつきを映しておいて「堀北真希」とテロップを出してしまうようなもので、いくらなんでもおかしいだろ、と思った。ご一行で熊本旅行をしたかったのかも知れない。
佐藤健の演出は相変わらず。平時と戦闘時のギャップを強調したいのだろうが、そのなよなよした演出が違和感ありすぎる。女性っぽい物腰、しなやかさを見せるにしてももうちょっとやり方があるはずで、歌舞伎の女形の演出などを参考にすれば良いのに、と思う。
一方で、殺陣の演出はなかなか見事。また、佐藤健のダッシュシーンなども自然な感じで良かった。多分、かなりの部分でスタントマンを使っているのだろうが、画面からそれがわかるのではなく、「こんなに身体がキレるわけがない」ということからの推測である。その点、藤原竜也はミイラ男の役なので、ボディダブルを使い放題だったろう。また、ジャンプするシーンは相変わらず物理法則を無視していて違和感ありまくりである。
といった、細かい演出面でも難ありなのだが、ストーリーとしても、強弱がなくて単調。同じようなシーンが続くので、眠くなってくる。これは脚本家の力不足。
主人公以外はほとんどいつもの演技で、新味がない。江口洋介にしても、藤原竜也にしても、青木崇高にしても、いつかどこかで見たような演技で(脳男とか、カイジとか、ちりとてちんとか)、もうちょっと違った演出をつけられないのかなぁ、と不思議に思う。江口と藤原は、監督がやりたくても、「これが俺のスタイル」と、やらせてくれないのかも知れないけれど。あ、最後にちょこっと出てきた福山雅治も、ガリレオみたいだった。
「次が楽しみ!」というよりは、「ここまで観ちゃったから、最後までお付き合いしましょう」というのが正直なところ。ここから大逆転で大傑作となるか、このまま沈むか、乞うご期待。評価は☆1つ半。
2014年10月04日
ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー(邦題はガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)
マーベルコミックスが原作のヒーロー物。アイアン・マンと同じく、難しいことは抜きにして単純に楽しもう、という作品。変に主張があったり教訓じみた話になるよりもずっと潔い。ラストまで引っ張ってしまえるならこれが一番良いと思う。
スター・ウォーズをもっと子供向けにしたような感じだが、正直、違いは良くわからない(笑)。善と悪の星間戦争、と言ってしまえば、どちらも同じ括りになってしまいそうだ。
個人的にはもうちょっと笑いが多いほうが好きだが、だからといって途中で飽きることは全くない。最後まで適度なテンションで楽しませてくれる。慣れない名前が多くて誰が誰だかわからなくなったり(まぁ、僕の頭が悪いせいなんだけれど)、ところどころ「あれ?」と思う表現があったりするけれど、細かいことはまぁ良いじゃないの、と思ってしまう。
最新の特撮技術で、大人から子供まで楽しめる一作になっている。なお、回収されない伏線も色々と用意されていて、続編を製作する気満々である。
それにしても、なぜわざわざ「ザ」を落として「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」という間違った言葉にするのだろう。こういうところできちんと「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」とするだけでも、子供の英語力が向上すると思うのだが、これでは逆に馬鹿が量産されてしまう。
評価は☆2つ半。
2014年10月02日
Dawn Of The Planet Of The Apes(猿の惑星:新世紀(ライジング))
原題にはライジングなんて言う言葉は使われていないのだけれど、謎の題名をつけてしまうのは前作と同じ。
Rise of the Planet of the Apes(猿の惑星:創世記(ジェネシス))の評価はこちら
http://buu.blog.jp/archives/51295689.html
前作でサンフランシスコ近くの森に移り住んだシーザーが、世話になった人たちとどうなっていくのかを楽しみにしていたら、本作ではオープニングであっという間に人類がほぼ絶滅。前作で活躍した人たちも影も形もない。
電力の確保すらままならない、絶滅危惧種となった人類と、シーザーを中心とした猿達の戦いを描いているのだけれど、前作から15年ぐらいしか経っていないので、まだまだ猿の数は少なく、規模としてはかなり小さな戦闘になっている。それが面白いかと言われると、うーーーむ。
人間の中には親猿派と嫌猿派がいて、猿の中にも親人派と嫌人派がいるという設定で、4つの勢力の中にあって、親人派と親猿派の代表たちが激化していく戦闘の中で悩む、という展開。人間・猿の両社会とも統制が取れていないのが悪いのだけれど、両陣営とも数が少ないんだから、もうちょっと何とかならんのか、という感じで話が進んでいく。まぁ、実際の人間社会でも「ある、ある」という話で、ほとんど全ての戦争はこんな感じなんだろうな、と思わされる。
さらに続編が作られることが前提になっているので、まぁ、こんなものだよね、という感じで終了。若干食べ足りない感じである。評価は☆1つ半。
ジャージー・ボーイズ
クリント・イーストウッド監督の最新作。この10年ぐらい、コンスタントに良作を作り続けている監督らしく、全く中だるみなく最後まで観させてしまう。もともとミュージカルだったものを映画にしたそうだが、演劇らしい演出をそのまま映画に持ち込んでいるところが面白い。
フォーシーズンズの懐メロをバックに、ニュージャージーにあるイタリア移民の街の一角から台頭し、一時代を築いた青年たちを丁寧に描いている。昭和の中頃の米国の無法地帯っぷりも凄いが、そこでたくましく生きていく不良たちのパワーも凄い。そのあたりがストレートに伝わってくる。
また、誰もが知っている名曲の背景を映像化することによって、「あぁ、そういう歌だったのか」と気付かせてしまうあたりも良い構成になっている。
あと、何と言っても、みんな歌がうまい。音楽って凄いな、と思うけれど、その多くは、ちゃんとした曲を、ちゃんと演奏した場合。この映画は、それがきちんと出来ていた。
ミュージカル版も観てみたくなった。
クリント・イーストウッド監督らしい「苦い感じ」は希薄で、その点で物足りない感じはあるのだが、誰が観ても、批判らしい批判が出てこない作品だと思う。評価は☆2つ半。
2014年09月23日
舞妓はレディ
突然歌い出したり、踊り出したりする、ミュージカルというよりはむしろインド映画みたいな作品。最初はちょっと面食らうのだが、慣れてくればどうということもない。最初に面食らうといえば花街のセットがいかにもセットという感じで質感が低く、実際に京都でロケをやっている場面との差が気になるのだが、これも慣れてしまえばどうということもない。故意に質感を落として、昔の「オズの魔法使い」的な作り話感を出したのかも知れない。そうだとすれば、それは成功していると思う。
田舎から出てきて舞妓を目指す女の子の成長譚で、途中で挫折があって、それを乗り越えていくといういつものお決まりの展開ではあるものの、そこそこ良く書けている脚本と、三谷幸喜ばりの「実力俳優のちょい役無駄遣い」の連発によって、長い時間を飽きさせない。というか、スタートはちょっともたつく感じなのだが、中盤以降徐々にペースが上がってきて、最後にはかなり良い印象を持って終わる。
主演の上白石萌音は歌が上手で踊りにもキレがある。ちょっと荒削りだが、それが逆に映画にはまっていた。京都祇園で老舗料亭の家に生まれ育った田畑智子もぴったりのはまり役。この二人を映画の中心に設置した時点で、成功はかなりのところまで決まっていたような気がする。他にも数名の京都出身の役者を起用して、リアルな感じになっている。「これで、主役以外の歌がもうちょっと上手だったらなぁ」と思ってしまうのだけが残念なところ。というか、全編ミュージカル調にせず、ラストだけ歌と踊りではだめだったんだろうか?
何の説明もなく京都の名所がぽつりぽつりと出てくる。銀閣寺や知恩院あたりは日本人ならすぐに気がつくところだが、平安神宮の泰平閣みたいに普通に観光していると「えー、他はタダなのにここは有料なの?」とスルーしてしまうような場所まで出てくるので侮れない。
手放しで絶賛、というほどではないけれど、なかなか楽しめた。京都に詳しければさらに楽しめるだろう。あと、タイトルからも明らかなように「マイ・フェア・レディ」のパロディ映画なので、事前にそちらも観ておくと良いかもしれない。評価は☆2つ。
2014年09月17日
劇場版 零〜ゼロ〜
試写会で鑑賞。
ホラーということだったけれど、全く怖くないし、ハラハラ・ドキドキすることもないし、驚く場面もほとんどないし、もちろん考えさせられることもなければ泣けたりもしない。冒頭から音楽がもろ「サスペリア」調なので、それっぽい展開かと思ったら全然そんなことはない。というか、サスペリアの10%ほども面白くない。
一応、多重構造の謎解きになっているけれど、その謎に興味が出るような作りになっていないので、登場人物に「まだひっかかることがある」といった主旨のことを言われても「そう?俺は気にならないけど」という感じになってしまう。
ストーリーはしょうもないし、演出はグダグダだし、脚本は稚拙で「なんじゃこりゃー」レベルだが、「その立場の人がその状況でそんな発言するわけねぇだろ」とか、「引きこもっていようが何しようが、怪しいならまず部屋に踏み込めよ」とか、「イタコって、『ちょうど、いました』みたいにそうそう都合よくいないだろ、普通。俺なんかまだ一度も現物を見たことがないぞ」とか、「いくら女性の足だって、ビッコの男と同じスピードで歩くってないだろ」とか、「その建物、何で今まで誰も気づかなかったんだよ」とか、「何でそこで放置するかなぁ」とか、「お前、さっきまで溺れてたのに、今は足が水底についてるのか?」とか、「ミチはなんでそこに行ったんだよ」とか、「おいおい、カメラを貸してくれた男の子はどこに消えたのよ?」とか、3分に一回ぐらいのペースで突っ込みたくなるほどに突っ込みどころ満載なので、その目的で観るならかなり楽しめると思う。
柘榴坂の仇討ちのように、突っ込みどころすらない駄目映画に比較すればまだマシだけど、基本クソ映画なので、単純に面白い映画を観たい人には全く勧められない。TSUTAYAでレンタルするのも無駄だろう。
評価は☆零。あ、そういう意味のタイトルだったのか!
2014年09月14日
アバウト・タイム
試写会で鑑賞。
映画の世界では定番のひとつとも言えるタイムスリップもの。この手の映画で一番ポイントになるのは「過去へタイムスリップをしたあとの現在の世界の変化」に関する設定で、それに失敗した事例は最近だと「オール・ユー・ニード・イズ・キル」など、枚挙に暇がない。とはいえ、バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズなど、映画として見事に成功するケースも珍しくないので、多くの人がやりたがるのだろう。
結論から言ってしまうと、この映画は成功している部類。ストーリーの上ではタイムスリップにかなりの比重があるものの、その設定自体は無難で、あまり手を広げていない。大抵、タイムスリップができるようになると天下国家を語りたくなるのが世の常だが、この映画には「世界を大きく変えてしまえ」といった野望を持つ登場人物は不在で、むしろ小さな幸せのためにタイムスリップを繰り返す。おかげで、ストーリー上の大きな破綻がなく物語は進んでいく。嫌な登場人物がほとんどいないのも特徴的で、変人ではあるけれど、善人ばかりの家庭を暖かい視点で描いている。脚本のできも良く、会話のテンポが良い。
結末は非常にありきたりだが、そこに至るまでのエピソードにはユーモアがふんだんに盛り込まれていて飽きさせない。
評価は☆2つ半。カップルがデートに観るのにぴったりな感じの作品である。
2014年09月12日
柘榴坂の仇討ち
試写会で鑑賞。
桜田門外の変において井伊直弼を守ることができなかった武士が、主君の敵を討つべく13年間に渡って追い続け、とうとうその相手に巡りあったのだが・・・という内容。
これといって凄いストーリーがあるわけではないので、単調にならないように時系列をいじくっている。本当は凄い理由があるのかも知れないのだが、特別な効果は感じられなかった。
中井貴一や中村吉右衛門はなかなかの演技だったのだが、何しろ酷いのが広末涼子である。この子は予告編を観るだけでも大根役者であることが伝わってしまう稀有な女優だが、その広末涼子がずっと出ているので、さすがにだんだん腹が立ってくる。一所懸命演技をしようとしている努力だけは見て取れるのだが、何しろ才能がないので厳しい。
絵作りも、雪や椿の花の表現が不自然で、滑稽にすら感じる有り様。
そもそもストーリーが全然大したことないので、2時間の映画に仕上げようというのが無理難題である。加えておおよそ時代劇にはそぐわない役者を使ってしまったために、あらばかりが目立つ作品になってしまった。これで色々と突っ込みどころがあるならまだ楽しめるのだが、それもない。一体、何が見どころなんだろう?とりあえず、一年後にレンタルして自宅鑑賞すれば十分だろう。
評価は☆半分。
2014年09月10日
LUCY/ルーシー
予告編を観た段階から「これは期待が持てる」と感じていた。もちろん、迷作という観点からである。名作も良いのだが、迷作も観たい。しかも、とびっきりの奴を、である。そういう映画は邦画に多いのだけれど、洋画でもときどき変なのがでてくるので侮れない。
冒頭から、チータに襲われる草食動物の映像が挿入されるというベタな演出にびっくりさせられる。他にも、ネズミ捕りやら、動物の交尾やら、挙句は真っ黒な背景に「20%」とか表示されちゃったりして、リュック・ベッソンって、こういう演出をする人だったっけ?と過去作を思い返してしまう。加えて、本作は突っ込みどころが演出面だけにとどまらないところが素晴らしい。比較的短い映画にも関わらず「3分に一度は突っ込みどころ!」という迷作に仕上がっている。
生物は脳の10%しか活用できていない、というところまでは良いのだけれど、その活用の程度がアップしていくと、どんどんとんでもないことになっていく。そのエスカレートの具合が常軌を逸していて凄すぎる。なんというか、それはご自分の目で確かめてください、としか言いようがないのだが、迷作ファンにしかおすすめはできない。逆に、トンデモ映画を観たい向きには格好の餌だと思う。僕の場合は、予告編で感じた気配そのものだったので満足できた。途中で眠くなったけれど。
最近はトランスフォーマーを筆頭に中国マネーに寄っかかる映画が増えているけれど、この映画は韓国だった。最近は韓国でも映画の興行成績がアップしてきているのだろうか?
あと、日頃から高く評価している松浦美奈さんの字幕だったのだが、本来「着られる」とすべきところで「着れる」とら抜きを使った箇所があって非常に残念だった。
そんなこんなで、驚きに溢れた珍作だった。多分、ラズベリー賞でも高く評価してもらえるのではないだろうか。評価は☆ゼロ(笑)。
2014年09月05日
ルパン三世
黒木メイサ出演ということで、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」並に突っ込みどころ満載を期待しての鑑賞。
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のレビューはこちら
http://buu.blog.jp/archives/51099705.html
「俺って、アニメの登場人物に似ているでしょ?」という押し付けが画面からビシバシ伝わってくる絵作りである。それは、あたかもコスプレショウを観ているようだ。でも、いまいち似ていない。いや、見た目は似ているのかも知れないのだが、アニメで構築されているルパンらしさ、次元らしさ、不二子らしさ・・・といったものが感じられない。表面だけを似せている感じなのだ。これは全て演出の問題で、監督の力量不足だろう。
監督の演出は洋画っぽく音楽で引っ張っていく手法だったのだが、肝心の音楽もタイト過ぎて、「軽妙にしてコミカル、かつ洒落た感じ」がない。これは制作が日本テレビではなく、TBSだったからという大人の事情からかも知れないのだが、独自の世界観を築くというのなら、中途半端にアニメ版を意識しなければ良いのに、と思った。あと、子供の鑑賞を意識したのかも知れないが、外人に日本人がアフレコしていて、明らかな外人が流暢な日本語を喋っているのも違和感バリバリだった。
ただ、監督だけを責めるのは可哀想かも知れない。お金がない感が半端無くて、警察が大挙してやってきたのかと思ったのに、全景を見たら戦国自衛隊ですか?というぐらいに妙にこじんまりとした感じで拍子抜けしたり、あちこちで日本映画らしいショボイ絵作りになっていた。香港でロケをやったりして(つい最近公開された「GODZILLA ゴジラ」のように)中国市場にゴマをすっているのだから、もうちょっとお金を集めたら良かったのに、と思う。これはプロデューサーの力量不足だろう。
プロデューサーも駄目なら、脚本家も駄目で、特に銭形と不二子、銭形とルパンの関係性がグラグラしっぱなし。他にも、設定で首を傾げたくなるものがいくつもあった。ルパンが妙な泥棒協同組合に所属しているとか。五ェ門が斬鉄剣をふるっているのに車もヘリも真っ二つにならないとか。ルパンたちがあっさり人を殺しちゃうとか。変な仲間がいるとか。
通路をレーザーで封鎖しているのは過去にも「エントラップメント」か何かで観た気がするのだが、素でレーザーが可視化されているのは意味不明だった。
一番のポイントだった不二子の巨乳は、黒木メイサの胸に色々と細工をして頑張っていたようだが、それでも決定的にボリューム不足。もっと現実離れした、例えば叶美香さんぐらいのボリューム感が欲しかった。
観終わった時の感想は「意外と、突っ込みどころがなかった」というもの。もっと突っ込めないと、普通につまらない映画である。こんな映画を観たかったんじゃない。評価は☆半分。
2014年09月04日
バルフィ! 人生に唄えば
聾唖者の主人公が二人の女性の間で揺れ動く、という感じのストーリーだが、片や結婚をすぐに控えている美女、片や自閉症の少女、という対比がなかなか面白い。
脚本もそこそこに凝っていて、色々と時系列をいじっている。しかし、長い上映時間と、主人公が聾唖者のためセリフがかなり少ないという点を考えると、両刃の剣だった気がする。冒頭から関連性の良くわからないエピソードが続いていくおかげで、退屈してしまうのだ。
最後まで我慢していれば、ラストの30分ほどで「あぁ、なるほどね」ということになるのだが、それまでがとにかく長い。もうちょっと素直なストーリー展開にすれば、時間も短くなって、飽きさせない内容になったと思うのだが。
ただ、その捻った脚本が全然駄目だったわけではなく、おかげでラストはスッキリする。眠気対策さえきちんとしていれば、なかなか楽しめるはずだ。
それにしても、インドの美人は日本人が見ても美人である。
評価は☆2つ。
プロミスト・ランド
マット・デーモン主演の小品。米国の田舎でシェールガス開発のために土地の権利を買いあさっている大企業の営業マンと、その会社の乱開発によって土地を奪われた環境保護派の男性との闘いを描いているのだが・・・・どちらが正しいとも言い切れない状態でいくつかのエピソードを積み重ね、時間ばかりが進んでいく。このままでちゃんと風呂敷がたたまれるのだろうか、と不安になった頃になって物語が大きく動き出し、あっという間に収束する。そのやり方はなかなか見事で、脚本の技術には感心するのだが、同時に「ちょっと、予定調和っぽいよね」という印象も受けてしまう。
何か凄い感動があるわけでもなく、環境に対する考え方が大きく変わるわけでもなく、ごくごく当たり前の内容なので、別に見なくても良かったかな、と思ってしまった。役者の演技も、可もなく不可もなく、という感じ。すげぇつまらないわけでもないのだが、映画館でお金を払って観るほどのこともない感じ。レンタルで十分だと思う。
評価は☆1つ。
2014年08月16日
トランスフォーマー ロストエイジ
このシリーズは当たり外れの波が大きい。
トランスフォーマー/リベンジ ☆☆★
http://buu.blog.jp/archives/50867934.html
トランスフォーマー ☆
http://buu.blog.jp/archives/50359931.html
ちなみにダークサイド・ムーンは未見である。さて、シリーズ四作目となる本作だが、結論から言えばハズレ。しかも、トランスフォーマー以上の大ハズレである。
この作品も続編なのに「最近の映画は過去の作品の続編やリメイクばかり」と批判してしまう自虐ネタを筆頭に、会話にちょっとしたユーモアが満載なのは相変わらずで楽しい。しかし、主軸となるストーリーに全く重みがなく、観ていてすぐに飽きる。それなのに長いので、トランスフォーマー達の戦いよりも睡魔との戦いがメインとなる。
音楽で画面を引っ張っていくのは相変わらずのハリウッド風味だが、画面が単調なので、音楽の変化ばかりに注意がいってしまう始末である。
重要なギミックである変形も、変形前と変形後の造形に共通点が少なく、ほとんど原型を留めていない。これでは、変形前に車である意味がない。敵に至っては一度ほぼ完全に分解しているので、変形ですらなく、分解−再構築である。
子供向けということもあってか、恐竜タイプのトランスフォーマーも出てくるが、大人はこれを観ても特に興奮することはないだろう。
結構長いので、3時間の昼寝を目的に行くのは悪くない。ただし、トイレは先に済ませておかないと、周囲の人に迷惑をかける。もちろん、他の人の安眠妨害という意味で。
評価は☆ゼロ。
2014年08月15日
ぼくを探しに
2歳の時に両親を目の前で失いそれを機に口がきけなくなった男性が、記憶を取り戻すことができるおばさんと出会い、両親が亡くなった原因を突き止めていく、というストーリー。
主人公はセリフが一切なく、表情や態度だけで全てを表現しているところが見どころ。そして、ちょっとした謎解きによって最後まで引っ張っていこうとしているのだけれど・・・・ちょっと途中で中だるみしていることは否めない。もうちょっと何かあればずっと良くなったんじゃないかなぁ、と思う。
あ、そういうことだったのね、と思うと同時に、でも、大した話でもないよなぁ、と思ってしまうところがなんとも。小品だとは思ったけれど、小品すぎた感じ。
評価は☆1つ半。
2014年08月06日
複製された男
一見、不条理劇のようだが、実際には・・・って、書き出すとネタバレ不可避なので、まずは全体について。かなり抑えた演出だが、音で引っ張り続けるあたりは米国映画の影響が感じられる。しかし、ところどころに短いイメージシーンを挿入するあたりは欧州映画っぽくもあり、特徴的である。
ストーリーも複雑に構築されているので、観終わってから知人とあーでもない、こーでもないと語り合い、最後にはもう一回観ようか、となりそうな映画である。ところが、作品に派手さがほとんどないので、2度観たら寝てしまいそうなのが残念だ。
以下、ネタバレなのでここで評価だけ書いておくと、評価は☆1つ半。
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2014年08月02日
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト
ヴァイオリンの超絶技巧奏者として有名なイタリア人ニコロ・パガニーニの生涯を描いた作品。パガニーニ役にドイツ人ヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレットを配置しているので、演奏は素晴らしい。しかし、脚本はグダグダである。特に登場人物たちの心情がほとんど描かれないので、展開がいちいち唐突である。
また、脚本もダメなのに、演技もグダグダである。特にデイヴィッド・ギャレットは演技が素晴らしく下手。ヴァイオリニスト・モデルであって役者ではないので当たり前といえば当たり前。「すげぇヴァイオリニストがいるから、映画の主役をやらせちゃえ」ぐらいのノリで作ってしまったのではないだろうか。
と、映画としては全くいただけないのだが、演奏・録音はなかなかなので、デイヴィッド・ギャレットのコンサートだと思って鑑賞するなら十分に納得である。
当然のようにデイヴィッドをカッコ良く見せることに重点が置かれているので、彼のファンは大満足かもしれない。
でも、映画としては・・・・・評価は☆ゼロのところ、デイヴィッドの演奏におまけして☆1つ。
2014年07月31日
GODZILLA ゴジラ
東宝の表看板ともいえる超有名怪獣「ゴジラ」の米国版2作目である。1作目はいつだっけーと思って調べてみたらなんと1998年である。長野五輪の年で、僕の記憶が確かなら、松坂大輔が甲子園決勝でノーヒッターとなった年じゃないか。そんな昔の映画なので、なんかすげぇすばしっこい爬虫類がニューヨークで暴れまくったことと、その後も「デイ・アフター・トゥモロー」や「2012」といった災害映画(ただし、珍品)を撮りまくっているエメリッヒ監督ってことぐらいしか覚えていない。
ともかく、第一作とは全く関係がないようだったので、今度はどんな映画に仕上げたのか、興味津々で観に行ってきた。
冒頭で「日本、ジャンジラ」という聞いたこともなければ、日本らしくもない地名が出てきて不安になるし、所詮米国人にとっては日本イコール富士山&原発かよ、と思わされたりもする。米国人にとっては衝撃的であろう原発がぶっとぶ場面は、残念ながらフクシマを経験している僕には今ひとつ訴えかけるものがない。大丈夫かなぁ、と一層心配がつのったのだが、ちょっと感心したのはなかなかゴジラが登場しないこと。これを筆頭に、日本に関する頓珍漢な描写(各種看板とか、みんなが英語を喋っていることとか、カタカナで書きそうなところをわざわざ漢字にしているところとか)を除けば、良い意味で期待を裏切る前半だったと思う。
ところが、である。いただけないのはゴジラさんが登場したあたりからである。無能な人類があちこちを無駄に東奔西走する様子は滑稽を通り越して退屈である。折角前半を脚本力で見せたのに、後半の演出で台無しにした感じ。
怪獣映画は、やっぱりどこで撮るにしても、日本人がメガホンを握らないとダメなんじゃないだろうか。あ、でも、それじゃぁ、日本でしかヒットしないのかな・・・。
とりあえず、エメリッヒ版のゴジラよりは面白かった。でも、すげぇ面白いかといえばそんなこともなく、評価は☆1つ半。
2014年07月29日
マレフィセント
「眠れる森の美女」をベースにしたファンタジー映画だが、子供向けということもあって、脚本はゆるゆる。通りすがりの人物がたまたま(?)重要な人物だったり、大事な赤ん坊を見知らぬ妖精に預けて放ったらかしだったり、面白おかしく見せたいがためなのかこの妖精たちがめちゃくちゃ過ぎたり、「真実の愛」のキスをしたはずの男が非常に簡単に心変わりしたり、敵の兵隊によって雁字搦めにされたドラゴンを別の小さい生物に変身させれば良いのに放置したり、大人が観ると「そりゃぁねぇーだろ」という展開が目白押しでドッチラケである。とはいえ、子供ならストーリーを論理的に考えることはしないかも知れず、「この位なら子供は気がつかないだろう」と上手に手を抜くところが素晴らしい。つまりはこれがディズニーの技術なのだろう。
一方で、映像表現はなかなかのもので、幼稚なストーリーに目をつぶれば結構楽しめる。この点も子供向けと言えるだろう。
アンジェリーナ・ジョリーは頬がこけていて怖い。
あらが多すぎて楽しむ前にイライラしてしまう内容だが、子供には良いのかも知れない。評価は☆半分。
2014年07月25日
ジゴロ・イン・ニューヨーク
不景気で本屋を潰した三代目店主と、花屋の店員が男娼をオープンして楽しくやろうとしたのだが、やはりそこは素人、ちょっとしたことからトラブルに巻き込まれて・・・というストーリーを、ブラックな笑いと暖かさで見せていく、という趣向。
最近は欧州の映画での活躍が目立っていたウッディ・アレンが、いつもどおり飄々とした演技で笑わせる。彼の相方を務めるのが本作の監督・脚本を兼ねているジョン・タートゥーロ。そのせいもあってか、相方のほうが良いところを持って行っている(笑)。
観終わって何かが残るということではないのだが、軽い笑いに終始していて、観終わったあとの印象も悪くない。日比谷界隈を歩いていたら突然のゲリラ豪雨で行くところもなく、さて、どこで雨宿りしようか、という場面でのちょっとした時間つぶしには持ってこいの作品だと思う。
評価は☆2つ。
2014年07月22日
思い出のマーニー
宮駿氏が引退を表明してから最初のジブリ作品。公開前の宣伝はかぐや姫の物語と同様、イメージシーンを集めて主題歌を流すといった、内容が良くわからない性質のものだった。ベースは海外の児童文学のようだが、未読。ということで、ほとんど白紙の状態での鑑賞だった。
ストーリーは良くあるタイプの喪失と再生を描いたもので、札幌に住む喘息の子どもが夏休みに道東で療養した時のできごとを淡々と描いている。比較的新しい視点だったのはヒロインに絡むマーニーの位置づけ。ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、ファンタジーとは多少毛色が変わったものだった。あちこちにわかりやすい伏線を張ってあるので、ラストの前には観客はみんなマーニーが誰なのかわかってしまうのだが、それでも明智小五郎よろしく丁寧に解説するあたりが子供向けの映画っぽい。小学校高学年か、中学生あたりがターゲットなのだろうか。夏休みの公開なので、時期的にはぴったりである。
セリフを聞き落としたり、アイテムを見逃したりするとわけわからないかも知れないが、その方が逆に楽しめるかも知れない。
非常に気になったのは主人公の独白の部分で、かなり特殊な録音をしているようだった。その音声がめちゃくちゃ違和感があって、なぜこんな音にしたのか、小一時間問い詰めたい気分になった。もしかしたら、映画館の音響設備との相性が悪かったのかも知れないが(鑑賞はシネプレックス新座の2番)、それにしても酷かった。
評価は☆1つ半。最近のジブリらしい映画だが、もっと単純に楽しめる冒険活劇もやってくれないかなぁ、と思う。
ところで全然関係ないんだけど、予告編の短い映像だけでも大根役者であることを伝えることができる広末涼子は偉大だと思った。
2014年07月17日
オール・ユー・ニード・イズ・キル
随分主語が重いタイトルだなぁ、と思ったら、案の定日本人が考えたタイトルらしい。もともと日本の小説で、そのタイトルが「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。それを米国で映画化し、日本に逆輸入したということで、英語のタイトルはEdge of Tomorrowとのこと。
良くあるタイムスリップものだが、これといって特殊な工夫があるわけではない。設定はチープそのもので、物語を成立させるために非常に特殊な設定がなされている。タイムスリップものの最大の肝はタイムスリップをどう定義するかで、その点、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは秀逸だった。そこにあまり焦点を合わせなかった「ターミネーター」シリーズなどもあるが、本作はバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ同様、かなり重要な要素になっているにも関わらず、定義が非常に杜撰だったので、イマイチ物語に入り込めなかった。
映像も最近流行りの非常に細かいカットをつなげたもので、ただただせわしなく、何が起きているのか良くわからない。音とスピード感の勢いで一気に見せてしまおうという魂胆なのかも知れないが、単調なので眠くなる。
ラストの仕上げもイマイチで、「一体、どういう設定なんだ?」と突っ込みたくなる。この手のタイムスリップ&パラレルワールドものは、どうして設定をもっときちんとしないのか、不思議でならない。
ただ、ラストシーンだけはなかなか良かったので、観終わったあとの印象は決して悪くない。評価は☆1つ半。
2014年07月16日
超高速!参勤交代
予告編を見て面白そうだなーと思ったので観てきた。結論から書くとイマイチ。予告編が一番面白かった。
別に悪い映画とは思わないけれど、とにかく笑えない。こういう映画を観てしまうと、三谷幸喜さんというのはちゃんと笑える映画を作れるんだなぁと感じてしまう。ツボが違うとかじゃなくて、脚本そのものが客を笑わせようとしていないのだ。だから、僕だけじゃなくて、他の観客も笑っていない。コメディ映画としてはこれは致命的だと思う。
役者は普通に頑張っていたと思うし、演出も普通だし、ストーリーに嫌味なところもなく、これといって悪いところは見当たらないのだが、とにかく笑えない。この映画がコメディではなく、単に3.11で酷い目に遭ったいわき市の激励が目的ならわからないではないのだが。
これに比べたら、ウッジョブのほうが百万倍ぐらい笑える。評価は☆1つ。
2014年07月03日
ダイバージェント
試写会で鑑賞。最終戦争後の米国を舞台にしたアクション映画、なんだろうが、学園モノみたいな部分もあり、ジャンルは良く分からない。スポ根学園ものだろうか?
人間を性格検査をベースに5種類に分けて、その分類をベースに管理することで社会を統治している、という非常に無理のある設定。それぞれのグループが非常にわかりやすい演出と音楽で描かれていて、「この位わかりやすければ、頭の悪いあなた方でも理解できますよね?」といった特段の配慮が感じられる。良い者、悪者の描き方が単純そのものなので、小学生ぐらいだと楽しめそうだが、良い大人の鑑賞にはちょっと耐えられない気がする。
たっぷり一時間以上も新入りのトレーニングを描いていて、この映画、一体何がやりたいんだろうと心配になったあたりでようやく事件が起きるのだが、そのタイミングは制作サイドのご都合主義そのもの。キーになる人間が入隊した直後に事件が起きるなんて、そんな偶然が起きるのは映画の中ぐらいである。
マインドコントロールされた人間との戦闘は既視感たっぷりで、ラストも、これはターミネーターシリーズとかでも観た気がする。新しいものがほとんど感じられず、米国って、こんな映画に大金かけちゃうところが凄いよなぁと、悪い意味で感心する。とはいえ、小学生ぐらいならまだ映画の経験値が低いので、この映画を観ても「すげぇ」と感じるかも知れない。大人は無理。
何か残るものがあるわけでもなく、爽快感もなく、では突っ込みどころ満載かといえばそんなこともない、普通にダメな映画だった。ハンガー・ゲームみたいなものだろうか(観てないけど(笑))。
評価は☆ゼロ。
2014年07月02日
her
トランセンデンスと良く似た設定にも関わらず、できた映画は全く違う。トランセンデンスはジョニーデップの無駄遣いという感じだったのだが、こちらはスカーレット・ヨハンソンを非常に効果的に使っていた。
高度に熟成されたOSと利用者が恋に落ちる、というイマドキのストーリーだが、脚本がしっかりしているので全くバカにできない仕上がりである。ただ、広げた風呂敷のたたみ方には不満が残る。そこまでの展開がアイデアに溢れていたので、ラストにももうちょっと工夫が欲しかった。
脚本と並んで良く出来ていたのが近未来のパソコン事情。あぁ、こんな風になりそうだな、というのが上手に描けていたと思う。
これ、吹き替え版を作るなら、OSの声は絶対に秀島史香だと思う。
評価は☆2つ。ラストまでは☆3つの勢いだったんだけど・・・