僕には陶芸の師匠が何人かいるのだけれど、その中で特にお世話になっている人が二人いて、桜井さんはそのうちのひとり。その桜井さんが石神井で個展をやるというので、初日に行ってきた。桜井さんは一年に一度、この時期にしか個展をやらず、僕が陶芸を始めたのは去年の12月だったので、桜井さんの作品を見るのはこれが初めて。
実際に見てみると、有田や九谷の磁器とは対極にあるような、飾りを排除した、土と釉薬がもともと持っている機能や性質、美を追求したような器が揃っていた。
ざーーっと見ていくと、茶碗、酒器、大皿といった、陶器展で良く見かけるものではなく、カップ、ちょっと小さめのお皿やご飯茶碗など、普段使うような陶器が多かった。
その中で、僕が気に入ったのは大きな花器がひとつと、お茶碗のセット。
花器は、一目見て「あ、これだな」という印象。茶碗は面白い色合いの中に緑青っぽい青が良い感じで映えている。
どちらかを買おうと思ったのだが、花など飾らない家に花器を買うのと、たくさんあるご飯茶碗を買うのと、どちらが良いかかなり悩んで、ここはやはり一番気に入った花器を買うことにした。「会期中、飾っておいたらどうですか?」とオファーしたら、「割れると怖いので持って帰って下さい」と言われてしまったので、もうギャラリーからは消えてしまったのだけれど、写真でお楽しみ下さい。
なめらかに立ち上がるフォルムと、細かくびっしり入った貫入が美しい。また、縁の黒が良いアクセントになっている。持って軽いのも良い。軽さは、陶芸家が丁寧に成形した結果である。ということで、ひとことで言うなら「カッコイイ」し、桜井さんっぽい。個人的には、今回の桜井さんの個展では一番気に入った。
色々と陶芸作品を買っていて思うのは、「どれも甲乙つけがたい」という個展はイマイチで、「今回はこれが一番!」と決められる個展が良い。それは作品に絶対的な価値があって差があるということではなく、作品一つ一つに、個人の趣味趣向にあった作品をたくさんの中から選び出すことができるだけの個性があるということ。今回はそれが凄くわかりやすかったのが好印象。
あえてひとこと付け加えるなら、この貫入の入れ方を教えて欲しい。そんなテクニック、まだ教えてもらってない(笑)。
桜井寛之 陶展
日時
2015年10月3(土)-10月11日(日)
11:00-19:00 (最終日16:00終了)
10/7(水)はお休み
作家在廊日
10/3,4,9,11
場所
177-0041 東京都練馬区石神井町1-21-16
TEL 03-3996-8533
西武池袋線「石神井公園駅」より徒歩2分