このブログの読者なら僕が競技スキーヤーであることは知っている人が多いと思うけれど、長いこと競技スキーをやってきたおかげで、アルペンスキー以外にもジャンプ、距離スキー、スノボ、カーリングなど、いくつかのウィンタースポーツにも経験があって、五輪も夏季より冬季の方が好きだ。夏の五輪はほとんど観戦しなかったのだが、冬の五輪は観戦を楽しみにしている。
今日はスノボのハーフパイプをリアルタイムで観戦したのだが、このジャッジが酷かった。問題となったのは平野歩夢の2本目と3本目のジャッジである。ポイントは生データが表示されたので、それを転載する。
平野歩夢 2本目
SWE 96
FRA 92
CAN 90
USA 89
JPN 95
SUI 90
平野歩夢 3本目
SWE 98
FRA 95
CAN 96
USA 96
JPN 97
SUI 95
である。参考までに、銀メダルだったScotty James選手の2本目の採点も転載する。
Scotty James 2本目
SWE 92
FRA 93
CAN 94
USA 91
JPN 93
SUI 92
このデータを並べてみて、確実なのは平野の2本目より3本目の方ができが良かったということだ。全てのジャッジが平野の2本目より3本目を高く評価している。点数の差を列挙すると、
SWE +2
FRA +3
CAN +6
USA +7
JPN +2
SUI +5
である。では、2本目と3本目にそんなに大きな差があったのだろうか。また、平野の2本目は89〜96まで7点の開きがある。一方で、平野の3本目は95〜98、Scottyの2本目は91〜94で、両方とも3点差の中に収まっている。7点は、いささか開きすぎている。また、FRA、CAN、USA、SUI の4人のジャッジは平野の2本目よりもScottyの2本目を高く評価している。平野がジャッジへの怒りを力に変えることができたので3本目に逆転して優勝したのだが、このジャッジの不透明感は拭いようがない。
平野が見せた技はトリプルコークといわれ、縦方向に三回転する。コーク技の先駆者はショーン・ホワイトで、バンクーバーでダブルコークを披露して金メダルを獲った。ソチでも、平昌でも、コークはダブルが限界で、「ハーフパイプではダブルコークまでが限界」と言われていた。その常識を覆したのが平野である。五輪以外では平野が成功させたことがあったのだが、他には、正式な試合では世界中で誰も成功していない。それほどまでの大技を披露して、きちんと完走した。それでScottyに負けてしまうのでは、一体どうしたら良いと言うのか。
なお、ScottyはScottyでバックサイド(背中側から回転)のダブルコークを、メインスタンスとスイッチスタンスの両方で成功させているので、決して大したことのない演技ではなかった。だから、Scottyの技をトリプルコークよりも高く評価するというコンセンサスがあったのなら納得できる。しかし、そんな様子は3つのジャッジからは窺うことができない。フランス、カナダ、米国、スイスのジャッジはダブルコークと勘違いしたのではないか。
DAZNのサッカーコンテンツに「ジャッジ・リプレイ」という番組があって、元審判や元選手、サッカーファンによって判定の正当性を議論しているのだが、スノボのジャッジにも同様のコンテンツが欲しい。主観による採点競技には常にこういった不透明感がつきまとう。見る側が納得できる解説がないと、競技に対する興味を失いかねない。ジャッジは何を見て、何を評価するのか。これは観戦者のみならず、選手も興味があるはずだ。