なぜ今議論するのか
長いJリーグの歴史の中ではしょっちゅう現行の春秋制を秋春制にしようという動きがあったけれど、これまでは結局握りつぶされてきた。しかし、今回こそはちゃんと議論して秋春制に移行すべきだ。
ここへきて再び議論されているのは、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)が秋開幕に移行するからである。カレンダーをワールドカップやACLに合わせるべきではないか、ということである。
なぜ反対するのか
反対派の論拠は
1.冬に開催すると豪雪地域のチームが困る
2.学生の卒業時期と半年ずれてしまう
3.その他にも、日本社会の年度は春にはじまるものが多い
ぐらいで、特に1を重視する向きが多い。逆に言えば、豪雪対応さえできるならあとは瑣末なことと言っても差し支えない。そして、この問題については後述するように現実的な解もあるのだが、日本人の気質が旧態依然とした保守を好むので、なかなか話がまとまらないでいる。また、受益者が限定的と言う要素もある。
受益者像
秋春に移行した時の受益者は、
1.海外選手を獲れる有力チーム
2.海外移籍を視野に入れている有力選手
3.各世代の代表選手(インターナショナルマッチディ対応、ワールドカップ対応)
4.ACLに出ることができるJ1上位チーム
ぐらいで、J1の下位チーム、J2、J3にとっては大きなメリットはない。ここも秋春制が支持されない理由の一つでもある。
ただ、FIFAは全世界で統一していきたいようなので、この大きな流れから外れているとどんな不都合が生じるかわからない。
豪雪対策
さて、上にも書いたけれど、現在のところ反対派は「積雪が多いチームは開催が大変だし、応援も大変」ということなのだが、これは解決できないのだろうか。
現状、Jリーグは12月中旬から2月中旬までがオフになっている。
参考
2023シーズンは2/17〜12/3
2022シーズンは冬期にワールドカップが開催されたためイレギュラー
2021シーズンは2/26〜12/4
また、数年前までは12/20以降に天皇杯の準々決勝以降の試合をやっていた。
かように、現在も冬期には試合が行われてきていて、Jリーグの現在のオフシーズンは12月中旬から2月中旬である。この期間を「オフ」から「ウインターブレイク」と名前を変えるだけなら、豪雪地帯からも文句の出ようがない。つまり、秋春に移行した場合は、12月中旬までに前半戦を行い、2月中旬以降に後半戦を行えば良い。ここで一工夫するなら、ウインターブレイクの期間を短くすることが可能だ。それはウインターブレイク前の最終戦とウインターブレイク後の初戦を、豪雪地帯のチームのアウェイ戦にすれば良い。これでウインターブレイクを12/10〜2/10の2ヶ月間まで短縮できる。
ここでもう一つ見逃せないのは、リーグ終盤で豪雪に見舞われても試合は絶対に行わなければならないのだが、ウインターブレイクの前後であれば、試合を順延して、暖かくなって雪が溶けてから実施するのでも構わないという日程的余裕があることである。
問題は試合よりむしろ練習環境だろう。現状のJ1で問題になりそうなのは札幌と新潟だが、両チームはウインターブレイクの期間中については高知や和歌山のようなJリーグのチームのない地域をサブホームタウンとすることが考えられる。現状でもシーズンイン前の寒い時期はどこかの南国でキャンプを張っているチームが多いと想像できる。サブホームを設定すれば、サポーターの増員にもつながる。
サブホームのスタジアムで試合開催となると、問題になるのはVARを含めたスタジアム整備だが、ウインターブレイク期間中の練習であれば、そういったインフラの整備も不要になってくる。
豪雪地帯のチームは、冬期の練習をサブホーム、試合はアウェイを集中開催というのが現実的なところになる。
現在の札幌、新潟はチームづくりに成功していて、Jリーグでの優勝は難しくてもACLは十分に狙える位置にある。上位進出を視野に入れるなら真冬への対応は必須であり、それならJリーグの制度変更に合わせて、必要な支援を受けつつ環境整備を進めるのが良いだろう。
J1以外のチームへの対応
なお、J1以外だと
J2 仙台、山形
J3 青森、岩手、長野、松本
が雪国のチームになるが、これらのチームが著しく不利益を被らずに済むように、金銭的支援は必要になってくるだろう。
真夏の試合開催については夏休みに合わせたい興行上の理由がありそうだが、夏休み期間中はサポーターと涼しい場所で交流を深めたり、涼しい地域でキャンプを張れば良い。真夏をオフにするので何の問題もないし、どうしても試合をやりたければナイターで開催しても良い。現在のところJリーグは秋春に移行した場合は7月末に開幕を設定したいようだが、もうちょっと遅くでも良いのではないか。ただ、いつ開幕するかはもう少し議論があっても良いだろう。
結論
豪雪対応が片付くなら、あとは新卒対応が考えられるのだが、練習生として在学中から練習に参加することもできるし、現在の制度で十分対応可能である。
国際的な視点でサッカーを見るなら、FIFAのカレンダーに合わせておいて一切の損はない。むしろカレンダーが合わないことによるデメリットが大きい。
ということで、サッカー界でガラパゴス化しないように、さっさと秋春制に移行した方が良い。
追記
参考資料
2023年度 第4回Jリーグ理事会後会見発言録
https://www.jleague.jp/news/article/25058/